食事と栄養
2026.10.21
第2回 老化と病気は抗酸化物質で防ぐ ~都市伝説・宣伝・対応~

監修:東京農業大学名誉教授 田中越郎先生

食事と栄養

食べ物に含まれる抗酸化物質

私たちの体は、空気中の酸素によって強いストレスに晒されています。酸素は極めて反応性に富んだ物質であり、呼吸によりエネルギーを効率よく作っている反面、活性酸素種となり酸化ストレスという別の悪い方向への反応も引き起こしています。例えば、動脈硬化やがんや加齢にも酸化ストレスが影響しています。この酸化ストレスを軽減させる物質を抗酸化物質と言い、加齢を遅らせたり、動脈硬化やがんなどになりにくくしたりすることが示唆されています1)。食べ物に含まれる抗酸化物質の代表として、ポリフェノール、カロテノイド、ビタミンの3つのグループが挙げられます。

ポリフェノールは、芳香環にフェノール性水酸基を複数持つ化学構造の物質です。ポリフェノールには数千もの種類があり、表1に食品に含まれる身近なポリフェノールを挙げてみました。穀物も、これら抗酸化物質の重要な供給源でもあり、特に全粒穀物の外皮(ふすま)や胚芽にはフェルラ酸やその他のポリフェノールが多く含まれています。製粉や精製によって外皮や胚芽が取り除かれると、これらの抗酸化成分は減少しますが、近年は、紫色や黒色など色の付いた穀粒(紫小麦や赤米・黒米・古代米など)(図1)に含まれるアントシアニンを機能性素材として活用する研究や商品開発も進んでいます。

ポリフェノールの一種であるカテキンも幾つかの種類があり、お茶ごとにそれらのカテキンの種類も含有量も異なってきます。お茶の葉は太陽の光を浴びてカテキンを作るので、遮光しながら育てる玉露にはカテキンはあまり含まれていません。また紅茶はその製造過程でカテキンが少し壊れます。お茶のカテキン量をおおまかに比べると、煎茶>紅茶>玉露の順となります。カテキン摂取を目的でお茶を飲むときは、煎茶を飲むのが良いでしょう。

表1 身近な食品に含まれるポリフェノールの例

身近な食品に含まれるポリフェノール


図1 赤米(左)と雑穀米(右)

赤米(左)と雑穀米(右)


一方、カロテノイドとは野菜・果物などに含まれる、赤色や黄色を呈する脂溶性の色素で、数百の種類があります(表2)。代表的なものにニンジンなどに含まれるカロテン、柑橘類に含まれるクリプトキサンチン、トマトに含まれるリコペン、ほうれん草などに含まれるルテインなどがあります。カロテンとβ-クリプトキサンチンは体内でビタミンAに変換されます。

表2 身近な食品に含まれるカロテノイドの例

身近な食品に含まれるカロテノイドの例



ポリフェノールの都市伝説・宣伝

アントシアニンが多く含まれるブルーベリーが目にいい、という話は日本では有名ですが、海外では一般的ではないようです。このブルーベリーの話の出所は、第二次世界大戦中に開発したレーダーを搭載して夜間飛行が可能となったイギリス空軍が、レーダー開発を誤魔化すため「特産のビルベリーを沢山食べたパイロットは夜でも目が見える」というデマを流したそうです。この話が日本にも伝わり、ビルベリーがブルーベリーに変化し現在に至るようです。ただこのデマも出典は明確ではなく、都市伝説に近いのかもしれません2)。ブルーベリーを一か月間山ほど食べて、その前後で目の詳細な検査をした研究もありますが、目に対する明確な効果は見いだせなかったようです3)。ブルーベリーは目のために食べるのではなく、普通のおいしい果物として食べるのが正解だと思います。

同様な話に「フレンチ・パラドックス」があります。フランス人が高コレステロール・高飽和脂肪な食事を食べているのに心臓病による死亡率が低いのは、赤ワインを飲んでいるためで、赤ワインに含まれるポリフェノールのせいだ、という話です。しかし、体にいい影響を発現させる量のポリフェノールを赤ワインだけで摂ろうとすると、赤ワインのアルコールで肝臓を壊してしまいます。したがって、この赤ワインの話の出所は、おそらくフランスのワイン業者ではないかと推測しています。冷静に考えると、ブルーベリーも赤ワインも、ポリフェノールの効果を喧伝してマーケティング活動を行っていると推察できます4)。


抗酸化物質もいろいろな食品から少量ずつ摂取する

ポリフェノールにせよカロテノイドにせよ、非常にたくさんの種類があり、人体に対しての効果も、強いものから弱いものまで、千差万別ですし、たとえ効果が強くても、そもそもの含有量が少ないので、一つの食べものに含まれている量だけでは大した効果は期待できません。抗酸化物質を単一の食品だけで十分量摂るのは無理がありますし、デマや宣伝のために広められた偽情報も含まれる可能性もあります。

目指すべきは食事の基本に立ち返り、いろいろな食べものから少量ずつ摂取するという方法が無難であり、多彩な食べものから多種類の抗酸化物質を摂取するのが良いでしょう。

参考文献
1. Del Rio, D. et al. Dietary (poly)phenolics in human health: Structures, bioavailability, and evidence of protective effects against chronic diseases. Antioxid. Redox Signal.18, 1818–1892 (2013).
2. Vaneková, Z. & Rollinger, J. M. Bilberries: Curative and miraculous – a review on bioactive constituents and clinical research. Front. Pharmacol. 13, 909914 (2022).
3. Wakana, N. et al. Effects of blueberry, Vaccinium corymbosum, on eye functions. 日本健康医学会雑誌 16, 44–48 (2007).
4. 田中越郎, 医者が教える栄養学的に正しい最高の食事術. ダイヤモンド社(東京), (2026).