食事と栄養
2026.9.7
第1回 穀物の炭水化物は大切な栄養素

監修:東京農業大学名誉教授 田中越郎先生

食事と栄養

炭水化物の役割と質が重要

栄養学の基本の1つとしてエネルギー収支があり、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば体重は増える、という原則です。穀物やイモの主成分は炭水化物であり、炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分かれます(炭水化物=糖質+食物繊維)。食物繊維は消化酵素で分解されずエネルギーへの寄与は大きくないものの、腸内環境や満腹感や便通に寄与します。そのため、同じ“主食”でも種類や精製度、繊維量によって身体への影響は変わります1、2)。炭水化物の「質」、すなわち未精製で食物繊維が多いことが健康に有利であると言われています3)。それを踏まえると、「お米は太る」は半分正しく、半分は正しくありません。食物繊維の割合は、植物の種類によって幅が大きく、全粒穀物では高く、精製穀物では低くなる傾向があります。玄米に含まれる”ぬか”は、おおよそ10%で、玄米から白米となる過程(精米)で”ぬか”(1割)が失われ、白米の重量は玄米の約9割になります。白米に含まれる炭水化物の大部分はデンプンです。

白米は純粋なデンプンに近く、最大の長所は、消化しやすいことです。胃腸への負担が軽く、あえて粉にしなくても粒のままで食べることができます。病人に食べさせるお粥や重湯は玄米ではなく必ず白米で作ります。お粥や重湯でも「噛んで食べる」ことが重要です。お茶のようにすぐに飲み込むのではなく、口の中で唾液とよく混ぜ合わせてデンプンをなるべく分解することで、胃腸の負担を少しでも軽くできます。一方で、精米で食物繊維などが減るため「血糖値の急激な上昇」を招きやすいと指摘されています。日本食品標準成分表のデータを参照すると、炊飯した白米の可食部100 g当たりの食物繊維量は、玄米や雑穀に比べて低い値を示します。

玄米と精米の栄養素比較


したがって白米の“食べやすさ”が早食いや過食などを招く点を含め、栄養学的な長所と短所を併せて理解することが大切です。”ぬか”が除去された白米は、おいしく食べやすいので、早食いになりやすく、つい食べ過ぎてしまいます。しかも、食べた白米は、すみやかに消化吸収されるので血糖値が急激に上がってしまいます。これに対し、パンはデンプン、食物繊維、たんぱく質、脂質等の混合物なので、白米よりは消化吸収に時間がかかり、血糖値の上昇も白米ほど急ではありません。しかし、「パンは太りにくい」との単純化は誤解を招く表現です。


主食の選び方と食べ方の工夫

具体的にどうすれば良いでしょうか。現代人は時間に追われて「一膳で済ませる」食事を取りがちですが、次のように工夫してみては、いかがでしょう。
(1)主食の一部に、雑穀や玄米、全粒パンを少し加えてみる。先に述べたように、炭水化物の「質」を重視することの重要性が包括的レビューでも述べられており、未精製(全粒)穀物は食物繊維・微量栄養素が豊富で、心血管疾患や糖尿病のリスク低下と関連する疫学的エビデンスが複数のメタ解析で示されています3)
(2)咀嚼回数を増やし、よく噛む・ゆっくり食べる。咀嚼を増やすと、主観的な空腹感や摂取行動に影響を与え、食事量を減少させる報告が複数あり、咀嚼回数増加が満腹感低下や摂取量抑制に寄与する可能性が報告されています4)
(3)運動や歩行を増やし、活動量で総カロリー収支を調整する。食後にずっと座ったままよりは、軽い運動をする方が食後の血糖上昇やインスリン反応を改善することが示されています。階段利用や食後の軽い散歩等は実行しやすい対策です5)

このように、主食である穀物由来の炭水化物を「悪」と決めつけるのは妥当ではありません。炭水化物の「質」と「量」を理解し、食事全体のバランスと生活活動量で調整することが健康的な食生活だと言えます。

参考文献
1. 田中越郎, 医者が教える栄養学的に正しい最高の食事術. ダイヤモンド社(東京), (2026).
2. Reynolds, A. et al. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. Lancet 393, 434-445 (2019).https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)31809-9
3. Aune, D. et al. Whole grain consumption and risk of cardiovascular disease, cancer, and all cause and cause specific mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMJ 353, i2716 (2016). https://doi.org/10.1136/bmj.i2716
4. Miquel-Kergoat, S., Azais-Braesco, V., Burton-Freeman, B., & Hetherington, M. M. Effects of chewing on appetite, food intake and guthormones: A systematic review and meta-analysis. Physiol. Behav. 151, 88–96 (2015). https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2015.07.017
5. Dunstan, D. W. et al. Breaking up prolonged sitting reduces postprandial glucose and insulin responses. Diabetes Care 35, 976–983 (2012).https://doi.org/10.2337/dc11-1931