グルテンフリー
2023.7.26
第1回 グルテンフリーとグルテンフリー食品が必要な人

監修:安田女子大学准教授 庄林愛先生

グルテンフリーとグルテンフリー食品が必要な人

グルテンフリーとグルテンフリー食品とは

グルテンとは、小麦に含まれるたんぱく質のうち、グルテニンとグリアジンというたんぱく質が、小麦粉に水を加えて混ぜたり、捏ねたりすることで高分子化したものです。つまりグルテンフリー食品とは、小麦に含まれるたんぱく質が定められた濃度未満の食品のことを指します。グルテンフリー食品は、もともとセリアック病というグルテンの摂取が原因で免疫反応が正常に機能しなくなり、自分の腸の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の治療食として利用されていました。

欧米ではセリアック病の有症率が1%程度という報告があり、一般的な病気のひとつです。そのため、グルテンフリー食品も欧米のスーパーマーケットやレストランなどでもよく見られます。日本では、セリアック病は極めてまれな病気と言われており、研究もあまり進んでいないのが現状です。欧米に比べて日本でセリアック病患者が少ない理由は、セリアック病の発症に重要な役割を果たす遺伝子を持っている人の割合が、欧米では約25~30%であるのに対し、日本では約0.3%と非常に少ないことが挙げられています。


グルテンフリー食品の例

欧米では、パンやケーキ類、パスタなど、小麦を原材料として用いる食品の小麦を米粉やトウモロコシなどグルテンを含まない原材料で置き換えた食品をはじめ、日本でよく食べられる「しらたき(糸こんにゃく)」を麺の代替食品として利用したり、元々グルテンを含まないグレープフルーツジュースなどの食品もグルテンフリー食品として販売されるなど、数多くのグルテンフリー食品が販売されています。

欧米でグルテンフリーと表示して販売するためには定められた基準を満たす必要がありますが、日本ではグルテンフリーに関する基準は、現時点では定められていません。日本の食品表示法では、アレルギー症状が重くなりやすく、患者数も多い小麦、卵、乳など8品目(特定原材料)が含まれている容器包装された加工食品の原材料に、表示が義務付けられています。そのため、食品に小麦が含まれているかどうかは原材料表示で確認することができます。

グルテンフリー食品の基準と注意点

最近、グルテンフリー食品を小麦アレルギーの人に向けて販売しているのを見かけることがあります。セリアック病も免疫反応が関係する病気ですが、食物アレルギーとは異なるメカニズムで起こるので、グルテンフリー食品に関する基準と日本の特定原材料に関する表示の基準には、違いがあります(表)。

海外では、小麦からグルテンのもとになるグルテニンやグリアジンなどのたんぱく質を除去する処理を行った小麦でんぷんなどの原材料を使用しても、最終製品に含まれるグルテン量が基準を下回ってさえいれば、グルテンフリー食品として販売することができます。そのため、海外には原材料に小麦でんぷんなどの記載があるグルテンフリー食品も存在するため、グルテンフリー食品を小麦アレルギーの方が安全に食べられる食品と勘違いしないように注意が必要です。また、海外から来られたセリアック病の人に、日本の原材料表示をもとにして小麦を使用していない食品を提供する場合は、ライ麦や大麦が含まれていることもあるので注意しましょう。

表 海外のグルテンフリー表示基準と日本の小麦アレルギー表示基準の違い

海外のグルテンフリー表示基準と日本の小麦アレルギー表示基準の違い

*1 Codex:国連の専門機関である、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)による国際的な食品規格。
*2 グルテン不耐症:小麦アレルギーやセリアック病の免疫反応とは異なり、食品(グルテン)そのものが消化不良等を引き起こす症状。現在、明確な診断基準はない。

出典:CAC, CXS118-1979:“STANDARD FOR FOODS FOR SPECIAL DIETARY USE FOR PERSONS INTOLERANT TO GLUTEN,” 2008. 、THE EUROPEAN COMMISSION,‘‘COMMISSION IMPLEMENTING REGULATION (EU) No 828/2014 of 30 July 2014 on the requirements for the provision of information to consumers on the absence or reduced presence of gluten in food”, 2014. 、 FDA/CFSAN, ‘‘Gluten-Free Labeling of Foods, Final Regulatory Impact Analysis and Regulatory Flexibility Analysis,’’ 2013. 、消費者庁「食品表示基準 Q&A について(平成27年3月30日消食表第140号)」を加工して作成