血糖値と食べ方
2022.12.5
第3回 血糖値コントロールのための食べ方のコツ

監修:京都女子大学教授 今井佐恵子先生

血糖値コントロールのための食べ方のコツ

前回までのコラムでは、食後の血糖値の上昇をできるだけ抑えることの大切さや、食後血糖値と「食べる順番」や「食べる時刻」との関係をお話ししました。今回は、具体的な食べ方のコツについてお話しします。

血糖値を上げやすい食べ方

三角食べは血糖値を上げやすい

食べる順番の研究結果を発表した当初は、さまざまな質問を受けました。「順番を変えてもお腹の中では一緒になるのでは?」「三角食べは日本人の食べ方。口の中でごはんとおかずを口内調味して食べるとおいしい。順番に食べるなんて不自然な食べ方はむずかしい」など。

これらの疑問を解明するため、三角食べをしたら血糖値がどうなるかについても実験をしました。すると三角食べは野菜から食べたときより、血糖値が上がりました。1) おかずとご飯を一緒に食べるカレーライスや丼物を食べた後は血糖値が上がりやすいこともこれで説明できます。

早食いは血糖値を上げやすい

早食いの人は肥満や糖尿病など生活習慣病を発症しやすいという疫学研究が報告されています。しかし「早食い」の定義はなく、「早食い」かそうでないかはすべて自己申告でした。そこで、私たちが介入実験を実施したところ、10分で三角食べの早食いしたときは20分かけてゆっくり野菜から食べたときより血糖値のピークが高いことがわかりました。1) 先ほど述べたカレーライスや丼物を食べるときも早食いになりがちです。

以上をふまえて、食べる順番のコツは、  


 
  • ・野菜からゆっくりよく噛んで食べること
  • ・外食の時も野菜料理や魚、肉料理を先に注文すること
  • ・最初に野菜を1品加えてから、麺類や丼ものを食べるように心がけること
  •  

です。ただし、野菜だけを食べても体に必要な栄養素を満たすことはできません。おかずやごはんもしっかり食べて、サルコペニアやフレイルにならないよう注意してください。  

冷凍野菜を活用すれば、野菜も簡単にとれる

食べる順番、すなわち野菜→おかず→炭水化物の順番に食べることにより、血糖値もインスリンも抑えられることがわかりましたが、毎食野菜を食べることは簡単なことではありません。一人暮らしや少人数だと、使いきれずに廃棄してしまう、調理に手間がかかる、保管場所が足りない、また価格が高く野菜に手が出せない、という方も多いのではないでしょうか。そこでお勧めしたいのが、冷凍野菜の活用です。

冷凍野菜

冷凍野菜は必要な分だけ使えるため無駄がなく経済的で、電子レンジで簡単に調理ができます。冷凍野菜は野菜の収穫量が多く値段が安い旬の時期の野菜を使っており、季節外れの生野菜よりも栄養価が高いと言われています。収穫した野菜は、酵素の働きをとめるために、90~100℃の熱湯や蒸気でごく短時間の加熱をしたあと、マイナス40℃以下で急速冷凍されているため、保存中の変質や変色を防ぐことができ、味や栄養価もそのままの状態を保つことができます。

 
冷凍野菜の栄養価について
冷凍の野菜は新鮮な野菜より栄養価が落ちるのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。確かに水に溶けやすく熱に弱い水溶性ビタミン(ビタミンC、ビタミンB群など)は、下処理や冷凍過程で細胞壁が壊れ、解凍したときに流れ落ちる水分と一緒に栄養価が失われてしまいます。ただし、冷凍のまま煮物やスープにすればこれらの栄養を一緒にとることができます。熱に強い脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど)や食物繊維、カルシウム、マグネシウムなどは冷凍野菜でも失われることがありません。  

冷凍のブロッコリー、枝豆、ニンジン、オクラなどを上手に料理に取り入れて、野菜を手軽に食べるようにしましょう。カットオクラやカットネギなどはそのまま使えて便利です。冷凍果物のブルーベリーはヨーグルトに入れるとおいしく召し上がれます。ちなみに自分で野菜を切って冷凍保存した場合は、このような処理が難しいため市販の冷凍野菜より栄養価は落ちやすく、長期間の保存には向きませんので注意しましょう。  

市販のお惣菜等も利用して、食事は順番にバランスよく食べましょう

日本は、世界一の超高齢社会であり、高齢者世帯の割合は全世帯の30%、そのうち一人暮らしの高齢者世帯は50%です。今後ますます一人暮らしの高齢者は増えていくことが予想されます。食材を無駄にしない、また調理の手間を省くためには、冷凍野菜や冷凍のお惣菜、市販のお惣菜なども上手に取り入れ、健康で自立した生活を維持できるようにしましょう。毎食、野菜タンパク質のおかず炭水化物のご飯などを順番にバランスよく食べて健康長寿を目指しましょう。  

参考文献

  1. Saito Y, Kajiyama S, Imai S. et al. Nutrients 12, 2767, 2020. doi:10.33901/nu12092767