レジスタントスターチ
2022.10.13
第3回 レジスタントスターチの研究と活用に注目

監修:福山大学教授 井ノ内直良先生


前回までのコラムでは、レジスタントスターチと食物繊維の違いについてお話ししました。食品中の難消化性成分のうち、レジスタントスターチはデンプン性であり、一方、食物繊維は非デンプン性であり、この2つは構成する成分が異なっています。また、機能性については、レジスタントスターチは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方に似た特性を併せ持つことを紹介しました。

健康機能

1990年代の初め、ヒトの大腸内容物を分析した研究論文で、大腸内に大量に存在していた炭水化物は食物繊維ではなく、小腸で消化吸収されなかったデンプン性成分(レジスタントスターチ)であることが報告されました。この結果から、日常生活において、大腸に流入する難消化性成分は、食物繊維よりもデンプン性のレジスタントスターチのほうが多いことが示されました。その後、研究が進むにつれて、前回お話したようなレジスタントスターチの機能についても明らかとなってきました。実際に日本では、レジスタントスターチ3(RS3)である難消化性再結晶アミロースや、レジスタントスターチ4(RS4)である高架橋度リン酸架橋でん粉は、消費者庁が許可する特定保健用食品(トクホ)の関与成分として食品に利用されたこともあります。

成分と分類表

出典:消費者庁 特定保健用食品許可(承認)品目一覧を加工して作成



*分類の詳細はレジスタントスターチ第一回コラムにて紹介しています

研究が進むレジスタントスターチ

日本人の食生活はこの数十年で大きく変化し、それに伴い、生活習慣病などの疾病構造もかなり様変わりしました。食の欧米化により、高脂肪、高たんぱく質な食事によって、炭水化物の摂取量は低下傾向にあります。しかし、日本人にとって、主要なエネルギー源が、主食のご飯やパンなどの穀類から摂取するデンプンであることに変わりはありません。

デンプンに含まれるレジスタントスターチは比較的最近注目され、研究が進みつつある食品成分です。アメリカ国立衛生研究所(NIH)が運営する医学・生命科学分野の世界的な文献データベースPubMedによると、レジスタントスターチの論文数は、2012年頃から増加傾向にあります。生活の質を高めつつ、疾病リスクを低減する食品成分として、今後益々、レジスタントスターチの活用が期待されます。

「レジスタントスターチ」をタイトルに含む論文数推移


論文数推移

出典:PubMed timeline results by year を加工して作成