受講のきっかけ

為末大学食育学部に応募した動機の一つは、人と人が補い合い支えあって生きていくことで、それぞれのスキルや人間性を高めていく「協同して学びを創る学校」という教育目標のもと、子どもたちが一流のアスリートに直接ご指導いただくことで自分自身の持っているものを目覚めさせ、子どもたち同士で助け合っていく協同の心を育んでほしいと考えたからです。そしてもう一つは食育や体育、キャリア教育といったさまざまな教科をひとつにすることで深く学んでいく為末大学食育学部の授業が、本校が目指している教科横断的学習にぴったりと合致していたので、本日の授業を大変楽しみにしておりました。(校長談)


札幌市立稲穂小学校 渡辺 聡 校長

子どもたちがお二人の先生のことをリスペクトしながら、自由に発想を広げて、楽しみながら助け合いながら課題を達成する姿を見て、非常に満足しております。当校の児童は体育スキルでいうと北海道では平均的なレベルなので、決して運動が得意なわけではないのですが、それでも子どもたちが前向きに課題に取り組み、素直に理解しようと努力しようと動いていたのがとてもよかったですね。

為末先生、こばた先生はグループで話したり、ペアで相談したりという、子どもたち同士で話し合う機会をたくさん作っていらっしゃいましたよね。そういう授業形態をとることで、「こんなことを言うと笑われるんじゃないか」というバイアスを取り払って、何を言っても受け入れてもらえるんだという安心感をもてたと思います。高学年になると「恥ずかしい」という気持ちが芽生えるのは自然なことですが、人って助けてくれるんだよ、温かい社会ってこういうことなんだよ、ということが分かる学校にしていきたいと思っています。

また本校では、食育と体育は必ずリンクしているという考えから「食育体力向上部門」という研究部を立ち上げています。今日の食育の授業は、ゲーム的要素を取り入れて子どもたちが楽しみながら学ぶという、まさしく当校がめざす授業形態だと我々にとっても大変勉強になる内容でした。

そして最後の夢の授業ですが、為末先生が今日最も子どもたちに示唆を与えてくれたのが、夢の授業で先生の「なんとなくのイメージでなく、音付き色付きでありありとリアルなイメージをシーンとして思い浮かべなさい。それが夢を実現する方法だよ」というお言葉だったと思います。


6年2組担任 森 和穂 先生

今日は子どもたちが日々思い描いていたことを形にすることができ、とても嬉しく思いました。普段からチャレンジングな子どもたちなので、いつも通りにがんばってくれましたね。学年が上がるほど、委員活動などやらなければならないことが増えてくるので、なかなか体を動かす時間が確保できないのが現状ですが、学校としても毎週水曜に全校なわとびを行うなど体力づくりに力を注いでいるところです。今回の授業は、体を動かすよいチャンスになったと思います。

6年生の学年テーマは「共笑」。自分もまわりの人も笑顔にしていこう、というテーマで1年通して取り組んでいるのですが、その一環として職業について勉強しようということになりました。たとえば地域の老人施設を訪問したり、理美容師さんに講演してもらったり。夢の授業もその一つで、子どもたちには1年を通して本物に触れる経験をたくさん経験してもらいたいと思っています。

ユーチューバーが出てきたときは今っぽいなと思いましたが、シートを見ると臨床心理士や精神科医など、この年齢にしては具体的な夢を持っているんだなと驚きましたね。やはりプロに会う、本物に触れることで心が動く機会があるのは、子どもたちにとって大きなプラスになると実感しました。6年生の小学校生活はあと少しですが、こうした機会を大切にしながら、子どもたちが自信を持って生きていけるようサポートしていけたらと思います。


為末先生の感想

今回はすべての授業において、レベルの高い学校だった気がします。ハードルは最初からみんな怖がらずに跳んでいましたし、跳んだ時に軸がグラグラして体勢が崩れないのがすばらしい。男子、女子ともにかなり高い能力を持った子が何人かいましたし、彼らは何かのスポーツをやればモノになりそうだなという感触がありましたので、ぜひチャレンジしてほしいですね。もちろん、ハードルをやってくれたら嬉しいですけれど(笑)。

身体能力の高い子が多い学校なのかなと思いながら見ていましたが、そうでもないと先生にうかがって驚きました。最近はハードルに限らず、どの競技でも北海道出身のアスリートが増えています。体格の大きな子も多いようですし、何か地域性があるのかもしれないですね。とにかくハードルを簡単に跳べてしまうので、3歩でハードルを跳ぶ難易度高めのレーンを多くしましたが、それでも上手な子にとっては簡単だったんじゃないかなあ。

物事に対して怖気づかない感じは、夢の授業でも同じでしたね。普通はいろいろなアプローチをしながら、少しずつ夢の姿をクリアにしていく作業が必要ですが、みんな「こういうことをやりたい」という思いが自分の言葉でちゃんと話せたし、どうしてそう思ったのかという理由まで説明できていたので、僕が手助けするまでもなかった。打てば響くという感じで、話をしていてとても面白かったですね。


こばた先生の感想

今日の子どもたちは私が話をするとウンウンとうなずきながら聞いてくれましたし、質問しても答えがスムーズに返ってきたので授業がとてもやりやすかったですね。夢の授業の時も、1人の児童が夢について話すと「じゃあこういうことやったら?」とまわりのみんながサポートする形でその子の夢がどんどん膨らんでいくのがわかって楽しくなりました。人前で発表するのを恥ずかしそうにしていた子も、隣の子が一緒に立ち上がって発表の間じゅう背中をなでてあげていて、こちらまで温かい気持ちになりましたね。

じつは、私が食育のサッカー選手のサポートをしているという話をしたら、授業の後にある男の子が質問に来たんですよ。普段、小学生からは「何を食べたらいいんですか?」という漠然とした質問をされることが多いんですが、その子は「試合の何時間前に食事をしたらいいですか?成長期の僕にとっては何が必要ですか?」と質問のしかたが全く違っていてびっくりしました。のびのびとおおらかでいて、いざという時にはハキハキと発表できるなんて、本当にすばらしい学校だなと思いました。