3時間目は、自分たちの「夢」についてみんなで話し合う授業です。
最後は、自分たちの「夢」についてみんなで話し合う授業です。児童にはあらかじめ専用シートに将来の夢について書いてきてもらい、シートをもとに夢を実現するまでの物語をグループに分かれて話し合ってもらいます。



話し合いにあたって、為末先生から3つのルールが紹介されました。
「1つめは、こんなこと書いたら先生が喜ぶんじゃないか、友だちがどう思うのかなということは気にしないで、自分がどう思っているかということを考えてください。2つめは、みんなと違う夢を発想してみてください。大きな夢、変わった夢がいいね。3つめは、友だちの夢を聞いて、それは難しいんじゃない?なんて否定するのは禁止。だったらこうしたらどう?という風に一緒に夢を広げてみてください」


人前で発表すると夢がかなう?

まずは、みんなが考えてきた夢について発表してもらいました。「発表してくれる人、手を挙げて!」と為末先生が問いかけると、児童たちから次々に手が挙がりました。

「野球選手か漁師になりたいです。野球は今やっているからで、漁師は小さい時から釣りが好きだったからです。」
「自衛隊のパイロットになって、カッコいい飛行機に乗りたいです。そしてブルーインパルスに入りたいです」
「大坂なおみ選手みたいにプロテニスプレイヤーになりたいです」
「僕の夢は発明家です。工作が好きなので、エジソンみたいな人になりたいです」
「美容師になりたいです。髪を切ったら人の雰囲気が変わるのが好きなので、自分もやってみたいです」

個性的な夢が次々に発表されましたが、「ユーチューバーが夢の人!」と為末先生が問いかけると「スポーツやドッキリ番組をやってみたい」という児童が現れたり、美容師が夢だという女子に「先生はどんな髪にしたらいいですか?」と聞くと「坊主です」という答えに会場が笑いに包まれたり、楽しいやりとりが続きました。先生に質問されて、答えにつまる児童もいましたが、為末先生は「人前で発表すること自体が大事。人前で夢の話をすると、その夢はかないやすい」と児童たちに伝えています。


夢を実現するまでのストーリーを考える

発表が終わると、それぞれの夢についてストーリーを考える話し合いの時間です。グループに分かれて、みんなで話しながらワークシートの空欄を埋めていきます。「ストーリーはできるだけ具体的に書いてね。サッカー選手なら、どのチームに入って年棒はいくら、という風に。自分が夢を叶えた時に、誰が喜んでいるかも考えてみてください」という為末先生の指示を受けて、話し合いスタート。

輪になってシートに取り組む児童たちの間を、為末先生やこばた先生、櫛浜小学校の先生方が回っていきます。たこ焼き屋になるのが夢だという児童に「じゃあ15歳の時は何をやっている?」「お店の名前は何にしようか?」と質問を投げかけたり。歯医者になりたい児童には「患者さんは何人くらい来る?」「うーん、100人以上かな」と児童が答えたり。

はじめはどう書いていいのかわからず悩んでいた児童も、1つひとつていねいに聞いていく先生との会話の中からヒントを得る人も多かったようです。時間と共にシートの空欄が埋まっていくのがわかりました。多感な高学年になると自分の夢を友だちに披露するのが恥ずかしいこともありますが、だからこそ友だちの夢に興味があるという面も。シートをのぞきこんで「もっとよく見せてー」「いやだよー」と言いながら、話し込むチームもありました。

話し合いの時間はあっという間に過ぎ、みんなが考えた「夢のストーリー」を発表してもらう時間になりました。
「僕の夢は漁師とプロ野球選手です。漁師は、まず3歳で釣りを始めて、7歳で船釣りをして、11歳でいろいろな釣り方を覚えて、15歳で新しい釣り方を考えて、20歳で漁師になって、50歳で養殖漁業に変えて、85歳で引退します。プロ野球選手は、11歳で野球を始めて、20歳でスカウトされて、60歳まで続けたいです」

「18歳で自衛隊の学校に入学して、22歳で卒業して、下関の小月基地でパイロットになって、休みの日は他の基地に行って参考にして、30歳で辞めて、貯めたお金で家族旅行したいです」
「15歳で高校に入って18歳からコンビニでバイトして短大に入って、20歳で一般の会社に入って、21歳で会社に自動車メーカーに入社して、お金をためてたこ焼きや『たこ太郎』を開きたいです。たこは近海で仕入れて、月70万円稼いで20年ぐらいで閉店したいです」

プロ野球選手やサッカー選手、美容師、学校の先生など、櫛浜小学校の児童たちの夢は小学生に人気の職業が多かったようです。けれど、夢のストーリーがどれも具体的かつ個性的! 為末先生も児童たちの話を楽しそうに聞きながら「サッカーの練習は1日何時間くらいする?」「年俸はいくらほしい?」「ブルーインパルス以外の飛行機には乗らないの?」など、児童たちにどんどん質問していきました。「どうしてその会社に入りたいの?」と聞くと「年収が一番高いと聞いたので」と正直な回答が返ってくるなど、終始和やかな雰囲気で発表が終了しました。

最後に為末先生からメッセージが贈られました。

「まだ将来の夢がわからない人も多いと思うし、他の人は夢をこんなにしっかり考えているんだと思ったかもしれないけど、夢は変わっていくのが普通なんです。大事なことは、時々言葉にして書いてみること。できればシートを埋めてみてほしいんだけど、半年後に見直してみるとぜんぜん違うことを考えているかもしれない。それでいいんです。とにかく自分が何をやりたいのか、そのために何をすればいいのかを書いてみることをしてほしいと思います。

そして僕が今日みんなに伝えたいのは、大人が『あなたの夢はなんですか?』と聞くときは、だいたい職業を聞いているということ。今日みんなが答えてくれたのも、すべて職業です。でも職業というのは手段であって、大事なのは職業を通して自分が何をしたいかということです。たとえばおいしい料理を作ってみんなを笑顔にしたいから料理人になりたい、みんなが映像を見て楽しそうにしてくれるからユーチューバーになりたい、自分が髪を切ってあげるときれいになるのを見たいから美容師になる、それが本当の夢なんですね。夢がつかめれば、いろんな手段を選べるから、こんなことをやってみたいということをこれから少しずつ考えていってほしいなと思います。

5年生、6年生に熱いエールを贈り、爲末大学食育学部の授業はすべて終了となりました。