妊娠中の食事と栄養
2021.10.15
第1回 妊娠中のママと赤ちゃんの食事のコツと健康

監修:千葉県立保健医療大学教授 谷内洋子先生

妊娠すると、食生活や体重の増加についても気になりますよね。
妊娠する前は、ファッション誌を手にダイエットに励んでいた方や、朝ご飯を食べないことが習慣化していた方も少なくないと思います。でも、おなかの中の赤ちゃんの健康や発育は、もしかしたらママの食生活の影響を受けるのかな?妊娠中に体重が増えてしまったら、元の体型に戻れないのかな…。そんなふうにご自分や赤ちゃんの健康を考えることは、とっても大切なことだと思います。
では、ママが元気で過ごし、赤ちゃんが健やかに成長する"バランスの良い食事"ってどんなものなのでしょうか。

"バランスの良い食事"ってどんな食事?

"バランスのよい食事"の明確な定義はありませんが、いろいろな食品群から食品を摂取し、「主食」「主菜」「副菜」*の揃った食事を心がけると良いでしょう。
1日2回以上、主食、主菜、副菜の揃った食事をすると、栄養素摂取量が適正になると言われています。
「主食」「主菜」「副菜」とともに、1日を通して「牛乳・乳製品」(牛乳コップ1~2杯)と「果物」(握りこぶし1個分)を組み合わせることで、食事の栄養バランスが良くなります。
食品によって含まれる栄養素は異なるので、特定の食品に偏らず、いろいろな食品を取り入れること、そして食事を楽しむことがママや赤ちゃんの健康につながると考えられます。

*『主食』『主菜』『副菜』とは

主食
ごはんやパン、めん類などです。炭水化物の多いもので、主にエネルギーのもととなります。妊娠中は必要なエネルギーも増えるので、主食をしっかりとりましょう。
主菜
肉、魚、卵、大豆および大豆製品などの料理です。たんぱく質の多いもので、主に体をつくるもとになります。一日の中で、肉や魚、大豆など幅広く組み合わせて、たんぱく質を十分に摂取するようにしましょう。
副菜
野菜やいも、きのこ、海藻などを主材料とする料理です。ビタミンやミネラル、食物繊維の多いもので、主に体の調子を整えます。野菜はゆでたり、炒めたりするとかさが減ってたくさん食べられます。意識して毎食副菜を食べるようにしましょう。

ママと赤ちゃんの健康を守るからだづくりは、バランスの良い食事から

ママの健康と赤ちゃんの健やかな発育には、妊娠中の適切な体重増加が大切です。ママのやせは、早産や低出生体重児(出生体重が2,500g未満で出生した赤ちゃん)が生まれるリスクが高い傾向にあることがわかっています。一方で肥満は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、巨大児や帝王切開分娩のリスクが高い傾向にあります。

低出生体重児は、出産前後の病気にかかるリスクが正常児よりも高く、また成人後に生活習慣病を発症しやすいことが国内外の研究によってわかっています。日本では、新生児のおよそ10人に1人の割合で低出生体重児が生まれていて、他の先進国に比べてその割合が高いことが、赤ちゃんの生涯を通じた健康を考えるうえで深刻な課題となっています。
日本人の若い女性では、ダイエットを試みている人や、実際にやせている人の割合が高いことから、エネルギー(カロリー)や栄養素の摂取不足="バランスの良い食事"がとれていないことが心配されています。
妊婦さんはもちろん、妊娠前からバランスの良い食事を心がけ、健康なからだづくりを意識することは、元気な赤ちゃんが授かるチャンスを増やし、将来の家族がより健康な生活を送れることにもつながると考えられます。

できることからで大丈夫!無理せずバランスの良い食事はじめてみませんか

ママと赤ちゃん、ご家族の健康と幸せのために、ご自分の食生活を見直してみませんか?といっても、難しく考えなくて大丈夫です。

食事は、主食を中心に主菜と副菜、汁ものなどを組み合わせて考えるとバランスが良くなります。下ごしらえや料理が面倒に感じるときは、冷凍食品や市販のお惣菜を利用するのも良いでしょう。今の冷凍食品は、野菜類が充実しているものやお魚料理など、バラエティに富んでいて、主食から主菜・副菜まで揃っているので、かしこく選んで食事のバランスを意識できると良いですね。日本人の食事は、もともと塩分が多めなので、ふだんの料理も冷凍食品も塩分の摂りすぎには注意しましょう。

本来食事は"楽しい"ものですから、無理なく、できることから始めてみることが大切です。エネルギー(カロリー)ばかり気にするのではなく、いろいろな食品、いろいろな料理を食べるように心がけましょう。