爲末大学食育学部、3年目最後の開催地となったのは福岡市立千早小学校です。小学校のある千早は福岡市東部に広がるエリアで、博多駅まで電車でわずか7分と絶好のロケーションが魅力。特に最近は福岡市副都心計画によって開発が進み、真新しい高層マンションや瀟洒な戸建てが立ち並ぶ人気ベッドタウンとなっています。今回は、そんな住宅街の中にある千早小学校で、卒業を間近に控えた小学6年生の児童を対象に授業を行いました。


日によって天候が目まぐるしく変わる3月ですが、当日は汗ばむほどの陽気。グラウンドに集まった子どもたちを前に、古賀良和校長は「本当にいい天気になりました! 今年の6年生はすばらしいですね」と笑顔で挨拶されました。「今日はみんな楽しみにしていた体育、夢、食育と3つの学習をします。卒業に向けて、すばらしい体験にしていきましょう。それでは大きな声で先生を呼びますよ!」という校長のかけ声を合図に、みんなで「為末先生!」と大コール。校舎から為末大先生が颯爽と現れ、授業が元気よくスタートしました。
1時間目の体育の時間は走り方やハードル走を学びながら、目標を実現する達成感を体験してもらう授業です。校庭に登場した為末先生は、「今日はみんなと一緒にハードルと夢の授業をします。元気にがんばっていきましょう。よろしくお願いします」と挨拶をすると、「まずはみんなでぐるっと一周走りましょう!」と早速ウォーミングアップ開始です。

ハードルを跳ぶために  -目標設定への道筋-

千早小学校の広々したグラウンドを6年生の子どもたちがのびのびと走った後は、爲末大学食育学部恒例、全員で円陣を組んで楽しい体操の時間です。
カラダをほぐすため念入りに屈伸運動をしたら、片足立ちで目をつぶって10数えたり、右手と左手を別々に動かすグーパー運動をしたりと、為末先生の号令でさまざまな体操をこなしていきます。続いて2人組になり、背中におんぶされた人がおんぶしている人の上半身を落ちずに一周する体操にチャレンジすると、「ムリだ!」「できた!」とあちこちから子どもたちの笑い声と叫び声が上がりました。
為末先生は苦心している児童に近寄っては「できる! 落ちないよ!」と励まし、できた児童には「やってみせて!」と声をかけていきます。みんなの雰囲気が一気にほぐれたところで、「ギリギリできたけど、挑戦してみたい人!」と為末先生が挙手をつのり、3組が選ばれてみんなの前でチャレンジ。見ている児童からは「がんばれ!」と声援が飛び交い、できた組には大きな拍手がわきました。
今度は「全員で手をつないで簡単なゲームをします」と為末先生。「僕が奇数を言ったら右へジャンプ、偶数を言ったら左へジャンプしてください。じゃあ、いくよ。3+3!」といきなり足し算を出されて「えー!」と戸惑いながら、みんな左へジャンプして難なくクリア。ところが「2×3!」「8-3!」「2×2×2!」「34-8!」と為末先生から問題を立て続けに出されると、計算を間違えた子や左右を間違えて飛ぶ子が続出!
最後に「僕が前と言ったら、前!と言いながら前にジャンプしてみよう」と為末先生から課題が出されると、みんな元気に大ジャンプ。最初は調子よく跳んでいた子どもたちですが、「前!と言ったら逆の後ろ!と言いながら後ろに跳ぶよ」「前!と言ったら前!と言いながら、カラダは逆に後ろに飛ぶよ!」とだんだんレベルが上がると子どもたちは大混乱。あちこちで児童同士がぶつかるたび、みんなの笑顔がはじけました。

障害物をどううまく跳び越えたらいい? -目標達成のポイント-

体操が終わったところで、いよいよハードルの練習に取り組みます。グラウンドには高さの違うハードルが7レーン用意されました。
「最初は何も考えなくていいから、高く跳んでみよう。思いっきりジャンプしてみて!」
為末先生の声を合図に、全員が好きなレーンを選んでハードルを跳んでいきます。千早小学校の子どもたちは、普段からカラダを動かすことに慣れているようで、どの子もまったく戸惑うことなくピョンピョンと高らかにジャンプしていきます。スタートダッシュから加速していく子どもたちに、為末先生も思わず「足、速いなあ!」と驚くばかり。
「倒してもいいよ、どんどんジャンプしてみて!」という為末先生の声に勇気づけられたのか、子どもたちの走りはますますスピードアップ。勢いあまってハードルがあちこちで倒れますが、みんなへっちゃらです。倒しても倒しても、こけても失敗しても、止まることなくグラウンドの端まで走り抜けていく元気な子どもたちを見て、為末先生も嬉しそうです。

自分でハードルの高さを選んで超えていく -目標設定-

いつもの為末大学の授業では、ここからハードルの高さを変えて、好きな高さのハードルを選んで跳んでもらうのですが、今回の授業ではちょっと違いました。ハードルの高さはあまり変えず、そのかわりに一部のレーンでハードルとハードルの間隔を狭めたのです。そしてレーンに並んでいた子どもたちに近づき、為末先生はこう指導しました。
「ここはハードルとハードルの間を3歩で跳べるように間隔を変えているよ。タンタンタン、と小刻みにジャンプして跳べばちょうどいいはずだから。やってみよう!」
通常のハードルレーンは、ハードルとハードルの間を5~6歩で走るようになっているといいます。それを3歩で走るのですから、いつもと違う歩幅に戸惑う子も。それでも何度か跳んでいるうちに、子どもたちは難なくクリアできるようになりました。
続いて為末先生からは「犬がおしっこしているのを見たことがある人! 犬がおしっこをする時は、片足を横に上げるでしょう。それと同じで、跳んだ時に後ろ足を横に上げてみて。そうすると自然と上半身が前に傾くから」とアドバイス。早速みんな好きなレーンを選んで、「犬のおしっこ走法」にチャレンジしましたが、こちらも問題なくクリア。あまりの出来のよさに「うまい! みんな足速いなあ」と為末先生も感心しきりでした。
最後は、お楽しみのデモンストレーションタイム。為末先生がハードルの高さをグッと上げて「これがオリンピックでのハードルの高さだよ。挑戦してみたい人!」と児童に聞くと、さすがの千早っ子もあまりの高さに手が挙がりません。そこで為末先生が少し高さを下げて、再度チャレンジャーをつのると、3人から手が挙がりました。見たこともない高さに緊張気味の3人でしたが、見事に全員成功し、大きな拍手がわきました。
みんなのチャレンジ精神を受けて、今度は為末先生がチャレンジ。オリンピックの高さを軽々と跳び越えていくと、目の前で見ていた子どもたちからは「うおーー!!!」と大歓声が。「もう一回お願いします!」とみんなからアンコールの声があがると、ハードルの中に男子児童が1人しゃがんでスタンバイし、その上を為末先生が軽やかにジャンプ。再び大歓声がグラウンドに響きわたりました。

まとめ  -目標達成はできたか-

「みんなはビックリするくらい運動能力が高いので、どうかこれからもがんばってください」
授業の終わりにそうコメントしたほど、為末先生は子どもたちの優秀さに驚いた様子。今回はハードル間の幅を変えて跳ぶというチャレンジを行ないましたが、千早小学校の子どもたちは初めてのことにもまったく臆することなく、歩幅を適度に調整しながらハードルを跳び越えたり、失敗しても気にせず飛び続ける姿が印象的でした。
最後に質問タイムが設けられ、「ハードル走で速くなるために先生はどんな練習をしましたか?」「どうしてハードル選手になろうと思ったんですか?」「もっとハードルが上手になるにはどうしたらいいですか?」という子どもたちからの質問に対して先生がひとつひとつ、わかりやすく回答しました。その後、全員で記念写真を撮って、体育の授業は終了となりました。