3時間目は、自分たちの「夢」についてみんなで話し合う授業です。
児童にはあらかじめ専用シートに将来の夢について書いてきてもらい、授業ではシートをもとに夢を実現するまでの「夢の発表シート」をグループに分かれて話し合ってもらいます。



話し合いにあたって、為末先生から3つのルールが紹介されました。
「1つめは、今日はまわりがどう思うのかなということは気にしないで、自分がどう思っているかということを考えてください。2つめは、みんなと違う夢を発想してみてください。3つめは、友だちにどんどん質問したり、こうしたらどうか?と広げてみてください」


オリンピックが「夢」から「目標」へ

3時間目は、将来の「夢」について考える授業です。
授業の始めに、「今日は星先生に、ロンドンとリオデジャネイロのオリンピックのメダルを持ってきてもらいました。誰か持ってみたい人!」と為末先生。全員がいっせいに手を挙げる中、ラッキーな子が持たせてもらいました(授業のあと、特別に全員が順番に持たせてもらいました)。

為末先生がメダルをもらったときの感想を聞くと「メダルって重いんだと思い、その瞬間にメダルをとったという実感がわきました」と星先生。続いて、メダルをとるという夢を実現するまでの、星先生のストーリーを聞きました。

星先生が水泳を始めたのは、1才半でベビースイミング教室に入ったのがきっかけ。小学2年生か3年生のころ、ばくぜんと「将来はオリンピックに出たい」と作文に書いたけれど、当時はピアノや習字などいろいろな習い事をしていたそうです。小学校高学年になると、習い事の中で一番「楽しい」水泳に専念するようになり、中学生のときもスイミングクラブに通い続けました。それでもまだ、将来水泳とどうかかわっていくかは見えていなかったそうです。
為末先生から「目標は、どれくらい先まで考えていた?」と質問されると「子どものころは1年単位。水泳は夏に大会があるので、来年の夏は入賞したいとか、次の夏は表彰台に乗りたいと考えていました。最初は順位が目標でしたが、だんだんタイムが目標になっていきました。高校の全国大会でトップになったころからオリンピックが夢から目標になり、4年スパンで次にクリアする目標を考えるようになりました」とのことです。


夢を実現するまでの道のりを、ストーリーとして考える

続いていよいよ、みんながそれぞれの夢について考え、ワークシートに書く時間です。ポイントは、将来何になりたいかだけでなく、夢を実現するまでのストーリーを考えること。「これから先何の勉強をするとか、何をしているとか、年齢も入れて書いてください。そして夢が実現したときの様子を、もし野球選手なら“ホームランを打った試合をお母さんが観に来てくれていてうれしかった”みたいに、ありありと思いうかべてください」と為末先生。

児童たちが話合う中、為末先生、こばた先生、星先生がグループをまわり、「マンガ家になったらどんなマンガを描きたい?」、「水泳選手になるなら故障しない体が必要だよ。そのためにストレッチして体をやわらかくすることも大切だよ」などとアドバイスしました。

話し合いが終わると、「夢のストーリー」を発表する時間です。為末先生が「発表してくれる人!」と呼びかけると、元気に手が挙がり、順番に発表しました。

「ぼくの夢は寿司職人です。中学、高校で寿司のことを勉強して、18才で寿司の専門学校に行きます」。
「私は救急救命士になりたいです。高校卒業後は医学部に行って、試験を受けて、研修して、30才くらいでプロの救急救命士になります」。

「ぼくの夢はバレーボールの選手と、コーチと、稲作農家になることです。中学でバレー部に入ってレギュラーになり、県大会に出場します。高校は農業高校に入り、部活はバレー部です。大学も農業を学べる大学に行きます。大人になったらバレーボールの選手になり、現役が終わったら中学か高校のバレー部のコーチになり、それが終わったらおじいちゃんの農業を継ぎます」
為末先生が「バレーボールのどこがいいの?」と質問すると「スパイクしたり、ボールがどんなに遠くに飛んでもすべりこんでレシーブして相手のコートに返すところ」とのことでした。

続いて女の子が「私の夢は通訳になることです。中学校で英検1級をとって、大学は国際系の学部に入り、25才でオリンピック選手などの通訳になりたいです」と発表。
最後にもう一人、「ぼくの夢は警察官です。中学では柔道部に入り、高校で警察の勉強をして、大学でも勉強して、その後警察学校に入って、24才くらいで警察官になります。人の役に立てるような、優秀な警察官になります」と発表しました。



職業とやりたいこと。2つある夢の形

児童たちの発表を聞いて、星先生は「みんな考えていることが現実的で感心しました」と驚いた様子。
星先生がオリンピックに行きたいという強い気持ちをもったのは、オーストラリアのイアン・ソープ選手が来日した際、生で初めてソープ選手が泳ぐ姿を見て「こういう人たちと同じ舞台に立ちたい」と思ってからのことだそうです。

最後に為末先生から「今日はみんなに夢を発表してもらったけれど、言いたいことが2つあります。1つは、夢は変わるので、これから変えていいということです。もう1つは、大人が言う夢には2種類あって、1つは職業です。もう1つはどんなことをやってみたいかということです。今日発表してくれた人の場合だと、警察官になりたいというのが職業の夢、人の役に立ちたいというのが、どんなことをやりたいかという夢です。そして2つめの夢を考えると、いろいろな道が開けることに気づきます。たとえば『こんな建物を作りたい』という夢があるとき、建築士になるだけでなく、大工さんになって作ることもできます。さらに市長になって、市民のための建物を計画することもできます。今日をきかっけに、将来こんなことをしたいと考えてほしいと思います」。
そうメッセージが送られ、爲末大学食育学部の授業が終わりました。