2時間目は、小学5年生5クラス164名の児童にバトンタッチ。体を動かすために必要な食事について学ぶ授業です。多くのトップアスリートを栄養面で支えるスポーツ栄養士のこばたてるみさんを講師に迎え、スポーツで強い選手になるには、勉強や運動会でがんばりたいときなどにどんな食事を摂ればいいのかについて、ゲーム感覚で楽しく学んでいきます。




食べ物のパワーを知ろう

授業を始めるにあたり、こばた先生はまず「為末さんは現役時代、どんな食事を摂っていましたか?」と質問し、ホワイトボードに料理のイラストを並べてもらい、食事例を披露してもらいました。その内容を見ながら「食べ物にはいろんな働きがあります。ちょっと見ていきましょう」と、こばた先生の説明が始まりました。

たとえば、ごはんやパン、パスタなどは体を動かしたり勉強したりするときのエネルギー源になること、魚やお肉はタンパク質で体をつくる働きがあること、野菜やきのこ類などは体を整えるコンディショニングの働きがあることを解説しました。「為末さんはこれらの栄養素をバランスよく摂っていたので、試合で活躍なさったんだと思います」とこばた先生。

魚や切干大根、牛乳など、小さい頃は嫌いなものがあったという為末先生。「なぜ今は食べられるようになったんですか?」とこばたさんが質問すると「陸上を始めて、こういう栄養のことを知ってから意識して食べるようになったんです」と為末先生。託麻東小学校は給食センターが校内にあるのを受け、「できたての給食を食べられる学校ばかりではないので、ぜひ今日はみんなもひと口でいいから苦手なものを食べてみてくださいね」とこばた先生が児童たちに促しました。

食べ物には主食、主菜、副菜があり、それぞれに役割があること、3つを組み合わせて食べることが大事であることを紹介し、「実際にゲームをしながら復習していきましょう」とこばた先生の言葉でゲームタイムの始まりです!


バランスのよい食べ方を学ぼう

まずは主食(エネルギー)、主菜(体づくり)、副菜(コンディショニング)それぞれの料理が描かれたイラストカードを児童1人1枚持ちます。体育館の中を自由に走り回った後、為末先生の合図でストップ。主食、主菜、副菜の3種類がそろうように相手を探し、3人1組のチームを作ります。さきほど学んだ食べ物の役割を考えながら体を動かす食育ゲームです。

広い体育館の中を走りつづけた後、笛の合図と同時にお互いのカードを見せ合う児童たち。「野菜持っている人!」「エネルギー、どこー!」と叫びながら仲間を探します。なかには「スパゲッティ!」「ごはん、だれー!」とメニューを限定して探し回る強者チームも!

3チームができると、代表としていくつかのチームに発表してもらい、料理の組み合わせがあっているかみんなで確認しました。あるチームは「トースト」「ポテトサラダ」「クリームシチュー」という組み合わせ。トーストは主食(エネルギー)、ポテトサラダは副菜(コンディショニング)、ではクリームシチューは?「大きなお肉が入っていると信じて、体づくりの主菜です」と児童。「そうですね。ただ、クリームシチューには野菜も入っているので、コンディショニングの働きもありますね」とこばた先生。

栄養のバランスと料理の組み合わせを考えながら、児童たちはゲームに再チャレンジ。代表で発表してくれたチームは「トースト」「スパゲッティ」「野菜サラダ」という組み合わせでした。トーストは主食(エネルギー)、野菜サラダは副菜(コンディショニング)、さてスパゲッティはどうでしょう?

「お肉が入っていると思うので、体づくり(主菜)だと思います」と児童が答えると「ミートソースのスパゲッティはそれだけでエネルギー源と体づくりになりますので、野菜サラダをプラスすると3つがそろうことになりますね。ただ、スポーツ選手はたくさんエネルギーを使うので、スパゲッティとごはんとか、パンとスパゲッティという食べ方もします。そのイメージなら、このメニュー選びもありですね。あとは、体づくり主菜がちょっと少ないので、お魚や卵料理、牛乳などをプラスするといいかなと思います」とこばた先生がアドバイスしました。

「ちなみに熊本の料理でいえば、馬刺なら体づくり、辛子れんこんならコンディショニングになります」と付け加え、「主食と主菜、副菜の3つが必ず揃うように食べてほしい」とこばた先生が児童たちに語りかけました。


食べた分だけ動こう

今度は10班に分かれてのチーム対抗戦です。まず2人1組で手をつないでダッシュして、床に置かれたカードの中から「おやつとエネルギー」が書かれたカードと、「おやつのエネルギーを消費するための運動量」が書かれたカードを選びます。正解のカード同士は切れ目がぴったり合うようになっていて、まちがえると形が合いません。いかに速く2枚のカードを合わせられるかが勝負です。

カラダを動かしながらの絵合わせゲームですが、チーム戦ということもあって児童たちは大盛り上がり!「これはちがう?」「走れ走れ!」と奮闘する出場者たちでしたが、後半はカードがなくなるというハプニングも。そんなこともおかまいなしで元気いっぱいの児童たち、絵合わせゲームの代わりに、全力疾走で先生とじゃんけん勝負に挑みました。

ゲームが終わると、ゲームで使ったカードを見ながら、みんなで食べもののエネルギーと運動量の関係を確認しました。 「たとえば、りんごを1個食べると、サッカーを23分やらないとエネルギーを消費できないということですね。だから、食べたら運動することが大事。おやつは食べちゃいけないんじゃなくて、食べた分を動く、動いた分は食べる。そうするとしっかり練習ができて足が速い選手になれたり、勉強をがんばれるようになると思います」

為末先生も「その通りですね。みんなでカードを見て、運動とエネルギーってこんな感じなんだーと知ってもらえたらいいと思います」とコメントして、2時間目は終了しました。