校長先生、ご担当いただいた先生、そして為末先生にも本日の感想をうかがいました。

受講のきっかけ

ハードル日本記録保持者であり、世界陸上メダリスト、オリンピック3大会出場というすばらしい経歴を持つ為末大先生が、夜須小学校に来て教えていただける、 ということが授業をお願いする最大の理由です。アスリートの方に直接指導してもらうということは、児童にとってめったにないこと。一生に一度の経験として楽しんでもらえたらと願いながら今日の授業を楽しみにしておりました。(校長談)


高知県香南市立夜須小学校 平石 誠 校長

為末先生にハードルを跳んでいただき、それを児童たちと一緒に間近で見学できたことは、指導する立場の私たち教員にとってもすばらしい体験となりました。あれだけ速く美しく、しかも準備運動もないままいきなりのトライで、世界で戦ってきたアスリートは違うなと思わされる瞬間でした。子どもたちからも自然に歓声が上がっていましたが、まさにあの瞬間を肌で感じてほしかったので、実現できて本当によかったです。

夜須小の子どもたちはまじめでおとなしい子が多く、都会の子のように自分から手を挙げて発表するという感じではありません。ただ、内に秘めているものはあって、初めてのハードルでも戸惑うことなく跳んでいましたし、話し合いの時間でも積極的に子ども同士で話していましたね。お弁当についても、子どもたちなりに科学的根拠を考えて、しっかり献立を考えていたなと思います。子どもなのに塩分補給を意識しているお弁当が多くて驚きました。

6年生の子どもたちはもうすぐ巣立っていきますが、この地域は保育園、幼稚園、小学校、中学校が隣接していて、一貫校のような形で指導を行なっています。中学校の先生が小学校に教えに来てくださったり、小学生が中学校で1日勉強したり、体育祭も小中合同で実施するなど、学校同士で連携を取ることでスムーズに進学できるように配慮しています。教わったことは素直に一生懸命取り組もうとする子どもたちなので、今日の経験を生かして中学校に上がっても伸び伸び成長してくれたらと思います。


高知県香南市立夜須小学校 松澤 留美 教頭

高知県の体力調査における課題の一つに、中学生女子のスポーツ離れが挙げられます。今日のような取り組みは体を動かす楽しさを知るよい機会となるので、本校にとって非常に大きなプラスになったと思います。5、6年生の中には体育が好きな子もいれば、そうでない子もいますが、為末先生のような世界的に活躍された方と直に触れ合うことができたことは、とてもよい思い出になったのではないでしょうか。スポーツが好きな子にとっても、励みになったことでしょう。

体を動かす楽しさを知ってもらうことで、高知県の健康長寿構想や生涯スポーツ につなげることができたらいいなと思います。やはり子どもは、ワクワクすると 向上したいという気持ちが強くなりますよね。今日のようなチャンスを頂けたことが、子どもたちの未来につながっていけばいいなと願っています。


高知県香南市立夜須小学校 6年担任 山﨑 一平 先生

まず世界で戦われた方を生で見られたのは貴重でしたね。実際にハードルを跳んでいただいた時のどよめきや目の輝きを見て、子どもたちも肌で感じた部分が大きかったんじゃないかなと思います。また最近は学年が上がるほど給食の残食が増えて、食べることに対して興味のなくなる子どもが多くなる傾向があるんです。特に6年生は体型などを気にして、おかわりに立つことがまずない。ですので今日の授業で「食べることは生きること」というお話をしていただいて、食事は生きるための原点だと子どもたちが感じて、少しでも変わってくれたらいいなと考えています。

夢の授業は具体的な夢を持つことの有効性を感じられました。「いつまでに」と時間を切ったり、「何歳までに○○をする」としたらそれまでに何をすればいいのか、というバックキャスティングの考え方が子どもたちの中にストンと落ちていって、じゃあ今何をしないといけないのか?と考えるところまでたどり着けてよかったです。自分を表現するのが苦手な子どもたちなので、自分から手を挙げる子がいなかったのは課題だと考えています。 口に出すことで本当に夢がかなうというお話もされていたので、口に出す、まわりの人に言う、ということをやっていこうね、とこれから伝えていきたいです。せっかく機会をいただいたので、今日みんなの前で発表できなかった分、夢のシートをしっかりとまとめて、ファイリングして全員で共有したいと思っています。


為末先生の感想

夜須小学校の子どもたちは少しシャイでしたが、とても元気で活発な子が多かったですね。特に夢の授業では、ユニークな意見を言う子が多いなという印象を受けました。

ハードルの授業では陸上経験がある子もいたので、これまでのような高さへの挑戦よりも、自分が跳べる高さでリズムを上げていくことを目指してみました。ハードルを教える際にいつも心がけているのは、子どもたちの恐怖心をどうやって取り除くかということ。勢いよくハードルの上を駆け抜けるのって、誰でも最初は怖いものです。でも今回の子どもたちはなんの意識もせず、越えていたのですごくよかったと思います。

食育の授業は、栄養を考えながら作られているお弁当が多かったような気がします。栄養に関して知識がある子が多かったのかもしれませんが、なぜそのお弁当にしたのかをきちんと説明できる子もたくさんいてよかったですね。

夢の授業では多様性があってとても面白かったですね!ぼんやりと夢を決めていた子と一緒に、どうすれば実現できるのかを考えられたのもよかったです。個人的には、ビートボクサーになりたい子がいろいろ夢を教えてくれて楽しかったです。おそらく子どもたちが考えやすいように、先生が事前にみんなに伝えたんだと思うのですが、現在から夢をかなえるまでの時間を線で引いてみて、時間軸で何をするのか考える子どもがたくさんいました。子どもにとってイメージしやすいやり方なんだと気づいて、僕自身とても勉強になりましたね。さっそく次回からは時間軸がわかるような工夫を入れてみたいなと思います。