2時間目は体育館に移動して、みんなで「夢」について話し合う授業です。
6年生にはあらかじめ専用シートに将来かなえたい夢を書いてきてもらい、授業ではシートをもとに夢を実現するまでの「夢の階段(ストーリー)」をグループに分かれて話し合ってもらいます。


まずは為末先生より話し合いにあたって、大事にしてほしい3つのポイントが紹介されました。 「1つめは、自分の思っていることを話してほしいということ。みんなの中に1人はユーチューバーになるのが夢という人がいると思うんだけど、そういうことをじゃんじゃん言ってほしいんです。 みんながどう思うかじゃなくて、自分がどうなりたいかということだけ考えてください。2つめは、少数派になること。みんなと違うことをあえて言うと面白い話ができるからね。 3つめは、友だちにどんどん質問してください。どうしてその夢になったの? 20歳の時はどうなっているの? という感じでお互いにどんどん質問してほしいなと思います」

事前授業での夢の発表  -自分の考えを人前で話す-

話し合いの前に、みんなが考えてきた夢について発表してもらいました。為末先生が「自分の夢を発表したい人、いますか!」と声をかけると、1時間目同様あちこちから積極的に手が挙がりました。

「ものを作る仕事がしたいです。大きい家を作ってみたいです。」
「僕の夢はユーチューバーです。『ヒカキン』や『はじめしゃちょー』の動画を見て、自分も作ってみたいと思ったからです。」
「月25万円以上稼ぐサラリーマンになりたいです。理由は家族を持ちたいからです。」
「テニスの先生になりたいです。テニスが好きだからという理由と、テニスの楽しさを広めたいからです。」
「僕の夢はエンジニアです。プログラムを作ってロボットを動かしてみたいです。

5人が夢を発表すると、為末先生はそれぞれの児童に質問を投げかけていきました。「どんな家族を持ちたいですか?」と問いかけられた児童は「長男と長女がほしい。」と即答。 「あ、もう決まっているのね。」と為末先生も思わず笑顔です。またユーチューバーが夢という児童に「どんな番組を作りたい? 番組名は決まっている?」と聞くと、「ゲームやガチャの動画を作りたいです。 番組名は…まだ決まっていません。」と児童。すると、まわりにいたクラスメイトから「モリソンTV!」とアイデアが飛び出す場面もありました。




話し合い -夢のストーリーをみんなで話し合う-

発表が終わったところで、今度は夢を実現するまでの「夢のストーリー」を考えていきます。「夢をかなえるために、具体的にどうなっていくかということを考えてみてください。 たとえばエンジニアだったら、15歳からプログラムを始める、20歳でアプリを開発する、という風にね。もうひとつは、自分が夢を達成した時に喜んでいるのは誰なのか? ということも考えるということ。 ゲームを作ったら遊んでいる人が楽しいとか、お父さんお母さんが喜んでいる、という風に、誰が喜んでいるのか想像してみてください。」と2つのポイントが伝えられました。

4~5人のグループに分かれ、さっそく話し合いスタート。一般的に小学6年生になると、自分の夢について誰かに話すことを嫌がる傾向が強いものですが、 川津小学校の児童は話し合い開始直後から各グループで活発に意見が交わされているのが印象的でした。各グループをまわる為末先生も、積極的に子どもたちの会話に加わっていきます。

「50歳くらいまでストーリーを考えてみて。中学、高校は何をする?」「オリンピックに出るとしたら、何歳の時に出たい? メダルの色は何色だろう?」「美容師になったら誰が喜んでいる?」

為末先生が質問を投げかけることで「あ、そっか。高校で始めればいいんだ!」ときっかけをつかむと、子どもたちは勢いよく夢シートを書き進めていきます。 「家を作りたいの? 具体的にどんなことをしたい?」と為末先生が聞くと「釘が打ちたい」と児童。 「じゃあ大工さんだね。大工になるためにはどうしようか?」と質問を重ねるうちに話が盛り上がり、為末先生が親身に相談に乗っていました。

児童のほうからも「為末先生は何になりたかったんですか?」と質問を投げかけると「僕は新聞記者になりたかったんだよね。取材でいろんなところに行けるから。」 「でも陸上選手になったんですね。」「そうだね。」「安倍総理に会ったことはありますか?」「あるよ。」「どんな人ですか? どうしたら会えますか?」 「オリンピックに出れば壮行会の時に会えると思うよ。」と、みんなで先生を質問ぜめ。児童の中には取材に来ていた新聞社の記者に「入社して何年目ですか?」と質問するなど、 周囲の大人を巻き込んでの一大質問大会となりました。

発表 -夢を具体化し、目標を設定する-

話し合いが盛り上がったところで、子どもたちそれぞれが話し合いの中でまとめた「夢のストーリー」を発表してもらいました。

「僕の夢はエンジニアになることです。高校は高専か工業高校に行って、将来はロボットを作って、ロボットを使う人を喜ばせたいです。」
「15歳からアルバイトをして10万円くらいためて、20歳で免許を持って仕事を始めて親孝行して、30歳でベテランの建築士になって大儲けをして、40歳でめっちゃ広い3階建ての新築の家を建てて楽しく暮らしたいです。」
「僕の夢は柔道の選手になることです。4年後の東京オリンピックに向けて練習をして強くなって、オリンピックに出たいです。オリンピックに出て金メダルをとったらお母さんが喜ぶと思います。」
「高校に行ったら強い選手になって10番の背番号を背負ってエースになります。そこでスカウトされて日本代表になり、バルセロナに行ってプレーをします。サポーターさんが喜んでくれると思います。」
「私の夢はお菓子職人になることです。中学高校は勉強をがんばって、高校を卒業したら専門学校でたくさんお菓子を作れるようになって、卒業したらお菓子職人になって、おいしいショートケーキを作りたいです。」

話し合いが盛り上がったおかげで、夢のストーリーはかなり具体的な内容に生まれ変わっていました。 他にもたくさんの児童から手が挙がりましたが「最後にもう1人発表してもらおうかな。」と為末先生が言うと、みんなから「モリソンTVがいい!」と、ユーチューバーが夢だという児童に逆指名が。 「じゃあモリソンTVにお願いしようか。ユーチューブは今日からでも始められるよ、どんな番組にしていきたいですか?」と為末先生が質問すると「ふざけたことを言ったり、 寒いダジャレを言ったりして面白い番組を作りたいです。」としっかり答えていました。


まとめ 

最後に為末先生からメッセージが贈られました。
「夢を考える時に1つポイントがあります。それは“ビジョン”といって、こんな風景を作りたいというイメージを持つということ。 ただぼんやりと『サッカー選手になりたい』と考えるよりも、『バルセロナのチームでワールドカップの決勝戦に出て、 自分がこういう方向に曲がってくるボールをシュートして2-1で勝てるようになりたいです』と考えるほうが、夢ってかないやすくなるんです。 お菓子職人にしても、こういうケーキを作りたいというものだったり、ユーチューブにしてもこんなダジャレを言いたい!と考えたり。そういうことを、これからもう少し考えてくれたらいいかなと思います。

もうひとつ大事なことは、誰が喜んでいるか?ということ。夢っていうのはいろんな方法でかなえることができるんです。 たとえば家をつくる仕事というのはたくさんあって、設計する人もいれば、家を建てる人、地面を測量する人もいる。そのうちのどの仕事をしたとしても、家をつくって人を喜ばせることはできるんですよね。 どんな仕事があるのか、まだわからないこともあると思うけど、いろんな方法で夢はかなえられるということを覚えておいてほしいと思います。今日は本当にいろんな夢が出てきて、とてもよかったと思います。 ぜひ自分だけでなく、友だちの夢も応援してあげてください。」
と、6年生にエールを贈り、2時間目の授業は終了となりました。

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