校長先生、ご担当いただいた先生、そして為末先生にも本日の感想をうかがいしました。

受講のきっかけ

為末大さんという一流アスリートの方が授業をしてくださるということで、単なる「夢を持ちなさい」ということではなく、夢を実現するにあたって特別な何かを子どもたちに感じてもらえるのではないかと思っておりました。また、こばたさんという全国で活躍されているスポーツ栄養の専門家から直接指導をいただけるということで、今後に役立つ話が卒業間近に聞けるのではないかと期待しておりました。(校長談)



福岡市立千早小学校 古賀良和 校長

私は為末先生の現役時代を見ていましたので、今日はレース時の厳しい表情とはまったく違う、ニ コニコと優しい笑顔で子どもたちに接してくださっていたのがとても印象的でした。千早小学校の 校区は非常に狭く、一番家が遠い子でも学校までは歩いて 15 分。山も坂もない平坦な土地なので、 日常の運動量はすごく少ないんです。そのぶん学校では体育研究校として運動に親しむ態度を育て ており、休み時間にグラウンドで遊ぶ子は他校に比べてとても多いと思います。為末先生は子ども たちの運動能力が優れていると褒めてくださいましたが、そういった日頃の運動が関係しているの かなと思いましたね。

また夢の授業では為末先生がくり返し「自分が夢を実現したときにまわりの人がどう思っているの か考えてみて」と生徒たちに語りかけていましたよね。もちろん夢は子どもたち1人ひとりのもの ですが、夢をかなえるまでにはまわりの支えがあるということ、まわりの人への感謝を伝えたいの かなと受け止めました。おそらく為末先生ご自身の体験からくる言葉なのかなと感じましたね。

子どもたちの発表も思い切った夢を言う子が多くて面白かったです。小学生も高学年になると、自分の能力や置かれた立場などを考えて、 将来に対してしらけている子が多くなるもの。それがバルセロナに行くとか、80 歳でメジャーに挑戦するなどと書けることがすばらしい と思いましたよ。自分も見習いたいなと思います(笑)。

こばた先生も食育の授業の中で、食べ物の水分のお話や、腹が減ってもはってもダメだということ、あんまん・肉まんのお話、ml が kcal と同等だということ、水分の多い食べ物のことなど、具体的に役立つ格言として教えてくださったので、子供にもとてもわかりやすくて よかったなと思います。何より3時間続けて、卒業前の子どもたちがいい経験をすることができたことが大きいですね。卒業に向けて大 きな思い出ができて、いい節目にできたので、時期的にもとてもよかったなと思います。


福岡市立千早小学校 只隈伸雄 先生

為末先生はさすがスポーツを極められただけのことはあるな、ということを体つきから思いましたし、子どもたちにかける言葉も本質をついていると感じました。例えば小学校の体育では「ハードルは3歩で跳ぶんだよ、5歩で跳ぶんだよ」と指導しますが、為末先生は「5~6歩でいいよ」とおっしゃっていたんですね。6歩になると足が変わってしまいますので、授業では絶対そのように指導しないんですが、先生はそれをわかった上で子どもたちに自由に跳んでいいよ、と声をかけていた。さすがだなあ、と感心いたしました。

子どもたちにとっても、特別な方が来られるということが刺激になっていたと思いますが、おそらく直接為末先生と触れ合って「この人、すごい人なんだ」と肌で感じたんでしょう。はじめから非常に意欲的に取り組んでいて、とてもよかったと思います。みんなハードルをポンポンポンポンと勢いよく跳んでいましたし、途中からはレースみたいになっていましたよね。

夢の授業も、1時間目の授業で自分たちを教えてくれた為末先生だったからこそ、先生の言う言葉が子どもたちにしっかりと届いているのが伝わってきました。だからこそみんなの夢がどんどん膨らんでいったのではないかと思います。例えば同じケーキ屋さんの夢でも、為末先生と話をした後のほうが「ケーキ屋さんになりたい!」という思いが強くなったのではないでしょうか。

はじめは子どもたちもシートに何を書いていいのかと悩んだと思うのですが、それが授業で書いているうちに思いが膨らんできて、さらに為末先生の話があり、先生の声かけが後押しして、いいスパイラルとなってあんな風にシートびっしりの夢になったんだろう、と見ていて感じましたね。


為末先生の感想

今日はハードルを跳ぶ時に勢いのある子たちだったので、すごく楽しかったですね。運動能力が高い印象だったので、たぶん普段から相当運動している子たちじゃないかなという気がしました。今回は初めてハードルの間隔を変えて跳ぶということをやりましたが、これまでの授業で高さを変えてやると途中で飽きてしまう子がいるなと気づいたので、それなら試合用の指導をしてみようというのがねらい。実際にハードルの試合では、ああいう形で跳んでいくのでね。高さに挑戦していくというよりも、上手にハードルを跳べるようになるほうが、子どもたちには合っているのかなと思いましたね。

ハードルの間隔が狭まると、急にリズムが変わるので難しくなるんです。何も考えずに跳ぶと、ハードルに近づきすぎて跳べなくなってしまう。だから、走りながら次のハードルとの距離を測る必要があるんですね。それを今日の子どもたちはすんなり跳べていて驚きましたが、それってすごく珍しいこと。普通はそんなに簡単にはいきません。

夢の授業では、サッカー選手になりたいという子が多かったですが、全体的に発表が面白かったですね。食育の授業でも、お弁当に入れるメニューなのにまったく弁当箱の形を気にしていないという(笑)。本当に自由ですばらしい子どもたちでしたね。

僕としては今日、子どもたちと話しながら「夢の授業はもう少しシンプルにしたほうがいいのかもしれないな」と感じました。今は授業の中でやることがたくさんあるんですが、そうではなくて夢は何かということと、夢をかなえるためのストーリーという2つだけでいいのかもしれません。そのほうが子どもたちは取り組みやすいのかな、という印象を受けました。

また、夢の授業はプレゼンテーションの授業でもあるな、と感じています。手を挙げて、みんなの前で発表すること自体が子どもたちにとってはすごく大事。今日は自分で手を挙げられない子が、まわりの子の推薦を受けて発表していましたが、それもよかったと思います。このあたりは来年度の授業の中で新しい試みをしていきたいなと考えています。



©NIPPN CORPORATION All rights reserved.