2時間目は、みんなで「夢」について話し合う授業です。 子どもたちに将来かなえたい夢を考え、夢を実現するまでのプロセスをグループに分かれて話し合ってもらいます。1時間目に続いて、ゲストの佐藤圭太選手にも授業に参加していただきました。

 



まずは為末先生より、話し合いの進め方について説明がありました。
「今日みんなにちょっとだけ意識を変えてほしいことが3つあります。1つめは、こんなことを言ったらバカにされるかな? と考えずに自分の思っていることを話してみてください。2つめは、みんなと一緒じゃなくてもいい、全然違っていいから気にしないでください。3つめは、人にどんどん質問してください。それがどんな夢で、どうしてそう考えるのか、どんどん聞いてみましょう」


事前授業での夢の発表  -自分の考えを人前で話す-

子どもたちにはあらかじめ「夢の階段シート」に自分の夢についてまとめてきてもらいました。まずは、みんなの考えてきた夢の発表です。「では発表したい人!」と為末先生が発表者を募ると、すぐにあちこちから手が挙がりました。西築地小の子どもたちは本当に積極的です。

「男子バレーで活躍して、日本一になりたい」「宇宙飛行士になって宇宙に行きたい」「科学者になって新しい物質を見つけたい」「ゲームが好きだからゲームクリエイターになりたい」

「ダンスを習ってハマったので有名なダンサーになりたい」「英語の通訳になりたい」など、子どもたちからはスポーツ系、頭脳系、エンタテイメント系とさまざまなジャンルの夢が飛び出しました。それに対して為末先生は「どうして宇宙飛行士になりたいの?」「どんなゲームを作りたい?」と一人一人にインタビューしていきます。子どもたちは一所懸命考えながら「無重力が楽しそうだから」「子どもから老人まで楽しめるゲームを作りたい」と答えました。

また、ひとりの児童が「ユーチューバーになりたい」というと、ユーチューバーを夢見る小学生が多いと知った為末先生、「じゃあ番組の最初の10秒間をやってみせてください」とすかさずリクエスト。「えー! でも〈ケーケーオッケー〉っていう名前だけは決まっています」というと「番組名が決まっているなんて素晴らしい!」と為末先生も子どもたちも大喜び! 以後、夢の授業ではこの時飛び出した「ケーケーオッケー」がみんなの合言葉になっていきます。

ひとしきり子どもたちの夢を聞いたところで「今度は先生の夢を聞いてみましょうか。どの先生の夢が聞きたい?」と子どもたちに聞くと「小澤先生!」と子どもたち。指名を受けた6年1組担当の小澤悠先生は「バスケットボール部の顧問をしているので、ぜひ大会で優勝したいです」と意気込みを語りました。さらに、佐藤選手の夢を聞くと「パラリンピックでメダルを獲ることです」と、間近に迫ったパラリンピックに向けて熱い思いを語りました。


話し合い -夢のストーリーをみんなで話し合う-

4~5人のグループに分かれ、児童同士で話しあいながら各自の夢を実現するまでの道筋(ストーリー)を考えていきます。さっそく話し合いを始める児童たち。夢の道筋を具体化しろと言われても、何をどう考えればいいのか戸惑う小学生が多いのですが、西築地小の子どもたちは話し合いについても、とても積極的。話し合いの時間がスタートしてすぐ、それぞれのグループで子どもたちが話し合う様子が見てとれました。 為末先生もはじめこそ子どもたちの輪に加わって、「どうして自分がその夢を考えるようになったのか考えてみて」「何歳までに何を、どうやってする?」と、話し合いがスムーズにいくようサポートに回っていましたが、次第に子どもたち同士の会話をそばでうなずいていたり、びっしりと書き込まれた夢の階段シートを読んで「面白いね!」と一緒に盛り上がるなど聞き役に回るように。子どもたちからどんどんあふれてくる夢のストーリーに興味津々のようでした。 佐藤選手も子どもたちの中にとけこんで、夢についてじっくり語り合っています。子どもたちにとっても、今まさに夢に向かってがんばっている現役アスリートの話が直接聞ける貴重なチャンスとなったようです。また、当日はテレビ局や新聞社の密着取材もたくさん入っていましたが、アナウンサーになるのが夢だという児童と、現役アナウンサーが直接語り合う場面も。為末先生や佐藤選手をはじめ、さまざまな職業を持つ人とのふれあいも子どもたちにとって貴重な体験になりそうです。

発表 -夢を具体化し、目標を設定する-

話し合いが盛り上がったところで、子どもたちそれぞれが話し合いの中でまとめた「夢のストーリー」を発表してもらいました。

「スターウォーズを見て宇宙のとりこになり、宇宙専門の学校に入ってトップの成績をおさめ、日本初の火星宇宙飛行士になって日本のみんなからも世界のみんなからも尊敬される宇宙飛行士になります」 「がんばって18歳で古生物学者になり、化石を発掘して恐竜を復元して、誰でも安心して楽しめるジュラシックパークを作りたいです」 「中学生の時にいろいろな本を読んで、発明をして特許を取る。高校の時に新しい生物を発見し、30歳でガンにきく物質を発見して40歳でノーベル賞を獲る。そして60歳からは年金で悠々自適な生活をする」

為末先生がリクエストした通り、さまざまな(壮大な!)夢のストーリーが披露されました。中でも注目されたのが「ケーケーオッケー」。「12歳で小さいカメラを買って撮影の勉強をして、15歳で動画を撮ったり編集ができるようになって、世界一面白いと言われたいです。25歳でユーチューバーになってケーケーオッケーと名乗り、みんなを笑わせたいです」と発表すると、「番組のタイトルコールはどんな感じ? やってみせて」と為末先生から再びリクエスト。

すると「どうもこんにちは、ケーケーオッケーです。今日の気分はオッケーです!」と余裕のパフォーマンスに全員拍手喝采! 「すごいね、もうできあがっているね!」と為末先生も感心しきりでしたが、「有名になったらケーケーオッケーの番組に出演したい」という声も児童から上がり、すでに人気番組の予感?

最後に佐藤選手が夢のストーリーを披露されました。 「来年2016年にブラジルのリオデジャネイロでパラリンピックに出場して、100m走で入賞できるようにがんばります。その後、2017年に世界選手権でリレー選手としてメダルをめざします。そして2019年の世界選手権、2020年の東京オリンピックで100m走でメダルをめざしたいと思います。その後は2030年まで選手を続けていきたいと思っています」

2016年はいよいよオリンピックイヤー。子どもたちは佐藤選手の夢のゆくえを、どう見つめるのでしょうか?

まとめ 

為末先生が「今日は友だちの話を聞いて、この人こんな夢を持っていたんだ、知らなかった! という人。どれくらいいるかな?」と子どもたちに聞くと、たくさんの手が挙がりました。「すごく大事なことは、友だちの夢を聞いたら、どうぞ友だちの夢を応援してあげてください。たとえば僕がオリンピックに出たいという夢を持った時、一人でも応援してくれる人がいてくれたら、がんばろうという気持ちになれる。みんなも友だちの夢を応援してあげてください」と子どもたちに語りかけました。

また、夢の授業を通じて先生が感じてほしかったのは、「夢の奥にあるもの」です。 「今日みんなが発表してくれた夢は、職業ですね。職業というのは手段です。たとえばシェフになるのが目的ではなくて、シェフになることで誰が喜ぶか、誰に喜んでほしいのか、それが本当の夢なんです。ぜひみんなも、なりたい夢の奥にあるものを考えながら過ごしていってほしいと思います」 と全員にエールを贈って、2時間目の授業は終了となりました。