3時間目は、6年生と保護者の方々を対象にした食育の時間です。
授業を始めるにあたり、同校の管理栄養士 藤田純恵先生から、この時間がみなさんに食の重要性を考えてもらう機会となるようにとのお話があり、授業がスタート。
講師はJリーグの選手やオリンピック選手など、第一線で活躍するアスリートを栄養面でサポートしてきたスポーツ栄養士のこばたてるみさん。為末先生と対談形式で講義は進められました。


朝食を食べる人ほど、学力が高くスポーツに強い。

まず、こばたさんは子ども達に質問。「今日、朝食を食べてきた人!」
多数の手が挙がりましたが、その中で1人の子どもに何を食べ来たのか尋ねると、「トーストにハムとチーズをはさんだものを2枚食べました」と回答。対する為末先生は「梅干しとカツオのおにぎりを食べてきました」とのこと。

現役時代はハードな練習の影響で「食べないと痩せるくらいだったので、意識してよく食べていた」という為末先生をはじめ、トップアスリートはよく食べる人が多い、とこばたさんはいいます。 例としてJリーグ選手の食事をあげ、「みんなのお母さんが食べているのが1日2000kcalとすると、強いJリーグ選手はその2倍、ラグビー選手は2.5倍食べています。選手たちはみんな、どんぶりでごはんを食べるんですよ。 どんぶり1杯がごはん茶碗2杯分。毎日どんぶり1杯またはごはん2杯食べていれば、その人は選手に1歩近づいていますね!」

たくさん食べるだけでなく、特に朝食を食べることが重要だとこばたさんは言います。小学5・6年生を対象に行った調査では、朝食を毎日食べる人のほうが食べない人よりシャトルランの回数が多いという結果が。 「朝食を食べたほうが持久力がつくんです。朝食を食べる子のほうが全科目で成績がいいというデータもあります。勉強をがんばりたいというお友達も朝食をしっかり摂りましょう」とアドバイスを送りました。 では実際に何を食べればいいのかについて、さまざまな食品をバランスよく食べることが大切だといいますが、特に重要なのが油。 「悪者にされがちな油ですが、たとえばアマニ油は魚に多く含まれるDHAがたくさん含まれています。お魚は苦手なお友達も上手に活用してもらいたいですね」とこばたさん。為末先生も選手時代はフィッシュオイルを摂るようにしたそうです。

子どもが1日に必要な摂取エネルギーは、12〜14歳の男子が2,200〜2,750kcal、女子が2,000〜2,550kcal。これを1日3食で割ると、1食に必要なカロリーは女子で約800kcal、男子で約900kcalになります。 メニューは、ごはんなどの主食が半分。残り半分は野菜などの副菜が2/3、肉などの主菜が1/3がベストバランスだといいます。 野菜嫌いな子も多いですが、為末先生は「12歳で陸上を始めてから、強くなりたい一心で野菜はよく食べるようにしていました。にんじんに塩をかけて食べたりもしたんですが、やはりおいしく食べるのが一番」といいます。 「今はドレッシングがたくさんあるので、うまく使うといいですね」とこばたさん。

なぜいろいろなものを食べるの?という理由について、こばたさんは「たき火」を例に挙げました。「薪は新聞紙で火をつけて、うちわであおいでようやく燃えますが、同じことがみんなのカラダの中でも起きています。薪は体脂肪、新聞紙はごはんやパスタなどの糖質。マッチは豚肉やウインナーなどに入っているビタミンB1。うちわとなるのがチーズや牛乳、卵、緑黄色野菜に入っているビタミンB2。B1、B2が不足するとカラダが疲れやすくなるので、そういう時は意識して摂るといいですね。またB1と一緒にネギなどに含まれるアリシンを摂ると、マッチをライターに変えて燃え方を大きくしてくれますよ」

正しいタイミングで食べると、食事は強い味方になる。

受験、進学と大事なイベントを数多く控えた小学6年生のために、いざという時に最大限の力が発揮できる「勝負メニュー」も紹介されました。

為末先生は「試合が夜7時とすると、4〜5時間前に炭水化物を食べて、1時間くらい前にバナナを食べていました」ということですが、これを聞いて「今のお話にヒントが隠されていましたね。 実は食べ物によって消化にかかる時間は違うんです」とこばたさん。

たとえば炭水化物であるおにぎりは、消化に2時間ほどかかります。対して油やバターはなんと12時間もかかるとか。 勝負の前に油ものばかりを食べると胃に留まったままになってしまうため、ここぞという時には消化が速くエネルギーに変わりやすい炭水化物がいい、とこばたさんはいいます。 また、為末先生が試合直前に食べていたバナナについては「緑色のもの、黄色いもの、熟して黒い斑点が出たものがありますが、直前に食べるなら黒いバナナがおすすめ。 90%以上がブドウ糖になっているので吸収が速いんです。逆に緑色のバナナはごはんと同じで、腹持ちがいいですよ。」

一方、運動や勉強が終わったら、できるだけ速く食事をしてほしい、とこばたさんはいいます。運動前が糖質中心なら、運動後はタンパク質中心。 「運動前はあんまん、運動後は肉まんと覚えてください」というこばたさんから、最後に子ども達にクイズを出題。「塾や運動の前後にコンビニのおにぎりを買って食べるとしたら、何のおにぎりを食べますか?」

野沢菜、明太子、鶏五目、焼きおにぎり、昆布、牛すき、チキン辛子マヨ、おかかの中から、運動・勉強前に食べたほうがいいものと、後に食べたほうがいいものを選んでもらったところ、 まんべんなく票が割れる結果に。「運動前は消化が速い野沢菜や昆布、焼きおにぎりなどがいいですね。逆に運動後は筋肉が傷ついていますから、タンパク質の鶏五目や牛すきなどを食べてくださいね。 今日はいろんなお話をしましたが、みんなに少しでも役に立ったらうれしいです」とこばたさんが挨拶すると、会場は大きな拍手で包まれました。



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