東京・練馬区の北部に位置する光が丘は、大規模団地やショッピングセンターが建ち並ぶ一方で、公園や農地など緑豊かな土地としても知られる都内有数の新興住宅地です。 そんな光が丘の駅からすぐの場所にある光が丘春の風小学校は、平成22年に光が丘第三小学校と第四小学校が統合されてできた新設校。卒業を間近に控える小学6年生を対象に、今年度ラストとなる爲末大学食育学部が開催されました。



この冬の東京は記録的な大雪に見舞われ、光が丘春の風小学校(以後、春の風小)の敷地にも数日前まで雪が積もっていたそうですが、当日は雪もほとんど消え、校庭に小学6年生65名が元気に集まってきました。 「オリンピックに3回出場して、世界選手権では銅メダルを2回も獲った為末先生から直接教えてもらえるなんて、なかなか経験できることじゃないよ。貴重な時間を大切に、しっかりと学んでください」と井上靖校長が挨拶されると、 子ども達の「為末さーん!」というかけ声で為末大先生が登場。 冬の冷たい空気を吹き飛ばすように、体育の授業がスタートしました。

ハードルを跳ぶために  -目標設定への道筋-

「今日は一緒にかけっこの練習をします!」と為末先生が第一声を発すると、「よろしくお願いしまーす!」と子ども達も大きな声で挨拶。 ランニングやスキップなどのウォーミングアップから、ゲーム感覚の楽しい準備体操をしている間も「できた!」「がんばれ!」とあちこちから声が上がり、春の風小のみんなはとにかく元気です。 男子2人がみんなの前に出て、背中におんぶされた人がもう一人のカラダを1周する組体操を披露した時には、落ちないよう必死でしがみつく男子に「がんばれ!」「早く回ってー!」とみんなで大応援。 みごと達成した瞬間には大きな拍手が湧きました。

速く走るにはどんな姿勢で走ればいい? -目標達成のポイント-

ウォーミングアップが終わると、ハードル走に欠かせないスタートダッシュの練習です。

「速く走る方法は、姿勢をまっすぐにすること。まず、片ヒザを土につけて座ってみて。そこから片手で頭のてっぺんを引っ張り上げるような気持ちで立ち上がろう。 それがまっすぐの姿勢だよ。そのまま前足に力を入れて、転ぶくらいまで前に体を傾けてみよう。あとはまっすぐゴールを見てダッシュ! 人間のカラダは見ている方向に向かって進むから、必ず前を向いてね」

こんな風に…と為末先生がスタートダッシュの見本を見せると、スピードの速さに子ども達から「オー!」と驚きの声が。 その後はスキップ、ダッシュと順番に練習を重ねましたが、子ども達は何をするにも機敏で戸惑いなくこなしていきます。「スタートはいつもより5cm低くなって、5cm前にカラダを傾けて。 転んじゃってもいいからね! 親指のつけ根に力を入れて、思いっきり前に体重をかけたら速く飛び出せるから」と為末先生の指導に応えるように、子ども達は地面ギリギリまで前傾姿勢になって弾丸ダッシュ!  みんなの思いきりの良さに、為末先生も目をみはっていました。

自分でハードルの高さを選んで超えていく -目標設定-

最後はいよいよハードル走です。校庭には一番低く設定されたハードル5レーンが整いました。

「好きなところを跳んでいいよ! 何も考えないで、どんどんやってみよう」と為末先生の言葉を受けて、子ども達は思い思いにハードルを跳び越えていきます。 しばらくすると為末先生の手でハードルのバーが引き上げられ、低いままのハードルから3段階高くなったハードルまで、高さの違う3タイプのレーンが完成。 それを見て子ども達からは「うわ、高い!」「きつい!」と怖がる人、「やった!」「きた!」と喜ぶ人、いろんな反応が見られました。

「どこを跳んでもいいよ。好きなところを選んで、高くジャンプしてみよう。ハードルを倒しても全然気にしなくていいからね」と為末先生。 普段あまり運動する機会がないという春の風小の子ども達、さてどんな風に取り組むのかと思ったら、いきなり一番高いハードルに長い行列が! 経験したことのない高さにも怖じ気づくことなく、1人また1人とハードルを跳び越えていきます。これには為末先生も思わず「すごいな、みんなよく跳ぶなあ」と一言。

ハードルを倒してしまう子や、転んでしまう子もいましたが、「いけいけ!」「大丈夫、そのまま走れる!」と為末先生の応援に励まされて、くじけず走り抜けていきます。 そして最後には全てのレーンにまんべんなく人が散らばり、みんながそれぞれの高さでハードルに取り組みました。

授業のラストは、為末先生によるエキシビションタイム。みんなの目の前で為末先生がハードルレーンを駆け抜けていくと、あまりの高さとスピードに子ども達からは校庭中に響き渡る大歓声!  さらに「アンコール!」の声が上がると、為末先生は「じゃあ今日一番がんばっていた子、来て!」と1組の熊井智基くんを指名して、前かがみにさせました。 「えー?」「ウソ!」と子ども達が固唾をのんで見守るなか、為末先生は軽々と子どもの背中をハードル走でクリア。最高潮の盛り上がりに包まれて、1時間目は終了となりました。

まとめ  -目標達成はできたか-

「今日は背筋をまっすぐにして、ゴールを見て走る練習をしてもらいました。ハードルは倒したとしても、そのまま振り返らずにがんばって走れば必ずうまくなります。今日はみんな自分で決めたハードルを跳ぶことができて、とてもよかったと思います。どうかこのままがんばって、チャレンジをしてください。」

授業を終えた為末先生の言葉には「失敗を恐れないでチャレンジしてほしい」というメッセージが、子ども達に伝わったという実感がこもっていました。ハードルを跳びきれずに転んだ子もいましたが、それ以上に子ども達の思いきりの良さが印象的な体育の授業でした。