男子400mハードル日本記録保持者で3度のオリンピック出場経験と、世界陸上競技選手権大会での2つの銅メダルを持つ「侍ハードラー」為末大さんが、全国の小学校で体・食・心について授業を行う「爲末大学食育学部」。2019年は、静岡県静岡市の川原小学校からスタート。今回は特別ゲストとして、元競泳選手で北京、ロンドン、リオデジャネイロの3つのオリンピックに出場、ロンドンとリオデジャネイロでは2大会連続の銅メダルを獲得し、世界水泳選手権でも金メダルを獲得した星奈津美さんが登場。おだやかな冬晴れの空の下、6年生78名が元気に授業に参加しました。



静岡市立川原小学校の児童たちは、校庭から大きな富士山を望み、校地のすぐ横が安倍川という広々とした環境の下、のびのびと学校生活を送っています。また、平成30年度には静岡市からコミュニティースクールに認定され、地元との交流をとても大事にしている小学校です。そのため、当日は自治会の方や保護者の方も見学に訪れ、児童たちを応援しました。


ウォーミングアップで心と体の準備

1時間目の体育の時間は、為末先生から走り方やハードルの跳び方を学ぶ授業です。そして授業の初めより少しでも上達することで、チャレンジすることの楽しさを知ってもらおうというのがねらいです。

まず校長先生から為末先生、こばた先生、星先生が紹介され、授業がスタート。
「みんな、2人1組になって向き合って。ひとりはドラえもん、もうひとりはドラミちゃん。そして『セット』と言ったら握手する寸前のように片手を出し合い、どちらかの名前を呼んだら、呼ばれた人が相手の手を握り、呼ばれなかった人は相手の手から逃げてね」と為末先生。
「さあ、いくよ。セット!ドラミちゃん!」。すると相手の手を握ることができた子は「やった!」、握れなかった子や握られてしまった子は「あ〜〜〜っ!」と、早くも大盛り上がり。

ゲームを何回か続けたあと、「ルールを変えます。ドラえもんの人は偶数、ドラミちゃんの人は奇数を言ったら、相手の手を握ります」と為末先生。偶数か奇数を言われると思ったら「4+3!」といきなり変化球。「3x4」とレベルが上がっていき「12だ!偶数、偶数!」と、体だけでなく頭の体操にもなりました。

続いて、ひとりがもうひとりをおんぶし、おぶられた人はおんぶしてくれた人の体のまわりを、地面に足をつかずに一周するというゲームにチャレンジ。なかなか難しかったようですが、最後には5ペアくらいが成功しました。


ハードルの跳び方を1つずつ、段階的に練習

体があたたまったところで、いよいよハードルの練習。
「速く走るためには姿勢が大切。まず、足を90度に開いてしゃがんでください。そして頭のてっぺんをつまんで、髪の毛が真上に引っ張られるようなイメージで、いつもより1cmくらい背が高くなるように立ち上がったらそのまま手を下ろして。肩、腰、足が一直線になるのが良い姿勢だよ」。

次にその姿勢で、手を大きく前後にふりながら一番手前のハードルまでスキップ。一周したら、今度は前に片足を大きく上げた状態からスタート。「速くなくていいから、上げた足で地面をグン!と踏んで上に高く跳ぶようにスキップして」。すかさず「マリオみたいに?」と男の子。為末先生のアドバイスで、児童たちのスキップは、1回目より力強くなりました。

その次は「前にグングン行く感じでスキップ」。為末先生から「足を上げて!」と声がかかると、児童のモモも上がります。続いて、肩を、腕だけでなくけんこう骨からぐるぐる水泳のバタフライみたいに回す体操をし、そのまま両腕を回しながらスキップしました。

そしていよいよハードル走です。7つのレーンには4段階の高さのハードルが設置されており、一番高い列は中学生用です。「好きな高さを跳んでいいよ。まずは上にジャンプ。足をひっかけてハードルをたおしてもふり返らなくていいからね」。

何周か跳んだところで、「犬がおしっこをするみたいに片足を真横に90度に上げてみて。すると勝手に身体が前にたおれるからね」と為末先生。児童たちの走って跳ぶスピードが一気に上がり、何回か跳ぶうち、最初より高いハードルにチャレンジする子も登場しました。


競技と同じハードル走にもチャレンジ

児童たちが次々と跳ぶ様子を見て、為末先生は中央の2レーンのハードルの位置を7m間隔にせばめました。「これが小学生の80mハードル走の正式の間隔。できる子は真ん中の列を、ハードル間を3歩で走って」。チャレンジした子は、最初は歩幅を合わせるのが難しそうでしたが、少しずつコツをつかんでいきました。
この後「クイズ番組で○か×があって、選んだほうのマークが書かれた壁をつき破るゲームがあるでしょ。ハードルの上にふすまがあると思って、つき破るつもりで跳んでみよう」と教えてもらうと、もう何周かチャレンジ。どんどんハードルを跳ぶ姿勢が良くなっていきました。

最後に整列し、為末先生は「オリンピックでは男子は110mと400mの2つのハードル競技があります。高さはどちらも約1m」と言いながら、ハードルの高さを1mに上げました。「跳んでみたい人!」ときくと、「ハイ!」「ハイ!」とたくさん手が挙がり、男子3人がチャレンジすることに。そのうちの1人が跳びこえると、大きな拍手が起こりました。

そして「1度しか跳ばないから良く見ていてね」と為末先生。助走をつけて走り出すと、ハードルを水平にハヤブサのように跳びぬけ、「わーっ!」と歓声に包まれました。

児童たちは満面の笑顔で、「ありがとうございました!」とあいさつ。為末先生たちと記念写真をとって、1時間目の授業は終わりました。


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