2時間目は、みんなで「夢」について話し合う授業です。
寒い体育館での授業に備えて、まずは全員で両手をグーパーして指をウォーミングアップ。少しほぐれたところで授業スタートです。子ども達に将来かなえたい夢を考え、夢を実現するまでのプロセスをグループに分かれて話し合ってもらいます。



まずは為末先生から話し合いのルール説明。「空気を読まないで、自分がどう思うかを大事にする」「みんなと違うことを考えてみる」「友だちの夢を応援する」など、大事にしてほしいポイントが紹介されました。

子ども達にはあらかじめ「夢の階段シート」が配られ、自分の夢について考えをまとめてきてもらいました。
それでは、みんなの夢を聞かせてください」と為末先生が声をかけると、5年生たちからは次々と手が挙がりましたが、6年生は少し恥ずかしそう…。そこで6年生は子ども同士でジャンケンをして、発表者が選ばれました。

事前授業での夢の発表  -自分の考えを人前で話す-

「テレビで見て面白かったので、お笑い芸人になりたい」「オリンピックの陸上選手になって100m走に出たい」「ゲームプログラマーになってゲームを作りたい」「北島康介さんみたいな水泳選手になりたい」 「テレビアナウンサーになって食べ物のレポートをしたい」など、さまざまな夢がとび出しましたが、なかには「ユーチューブが大好きなのでユーチューバーになりたい」という人も。 ここで為末先生が「ユーチューバーがわかる人!」と聞くと、多くの子ども達から手が挙がり「そうか、これが時代の格差というものだなあ」と感慨深げ。

バラエティ豊かな子ども達の夢に、為末先生は「どんな選手になってみたいですか?」「どんなゲームを作ってみたいですか?」と問いかけをしていきます。 そこで「格闘ゲームやパズルを作ってみたい」「実験番組を作りたい」と答える子もいれば、答えにつまってしまう子もいましたが、みんなが夢について一所懸命考えてきたことが伝わってくる発表でした。


話し合い  -夢のストーリーをみんなで話し合う-

続いて、15分間の話し合いの時間です。「どうせできないよ、なんて考えないで今日はやりたいことを自由に書いてください。大切にしてほしいのは、自分が夢をかなえた時に自分以外の誰が、どんな風に喜んでいるかを考えること。 何歳までにこうなる、という風に具体的な数字でストーリーを考えてください」と為末先生から課題が出され、グループでの話し合いが始まりました。

早速子ども達は「学校って何歳で入るのかな」「どんな会社に入ればいいのかな」と真剣な顔で話し合っています。為末先生はみんなの様子を見守りながら、「サッカー選手になったら、どんなプレイがしたい?」 「30歳になった時はどんなことをしている?」と具体的な質問を投げかけていき、夢を深堀りするコツを伝えていきます。時には「釣りのプロになりたい」という子どもに 「ユーチューバーと一緒にユーチューブで釣り番組ができるんじゃない?」とコラボを提案する場面も。

また、宮原小の子ども達はスポーツ選手が夢という子が多くいましたが、為末先生は「オリンピックに出たら、その後はどうしよう?」と引退後の人生まで考えるよう促します。 水泳選手になりたいという子どもは、少し考えてから「学校の先生になります」と答え、それを聞いた為末先生は「うん、いいね」と満足そう。 さらに、定年まできっちりストーリーを考えている子を見ると「すごいね、いいねえ」と褒めていました。

発表 -夢を具体化し、目標を設定する-

最後は、みんなで考えた「夢のストーリー」の発表です。 「陸上と勉強を両立してがんばって、26歳で言語聴覚士になって、耳の不自由な人を助けていきたいです。そして100歳まで生きたいです」
「26歳で水泳のオリンピック選手になって、37歳でスイミングスクールの先生になりたいです。45歳まで先生を続けて、その後は自由に泳ぎたいです」
「17歳で高校バスケットの全国大会に出場して、29歳でプロのバスケット選手になり、37歳で引退。その後はバスケの試合のナレーターをやってみたいです。プロの選手になったら、お父さんとお母さんがすごく喜んでくれると思います」
といったように、発表されたストーリーはどれも細かい年齢が入って、かなり具体的なものになっていました。なかには「プロ野球選手はやめて、ゲームプログラマーになります。ゲームの専門学校に行き、 20代でカプコンに入って人気ゲームを作りたいです」と、話し合いの間に夢を変えてしまった子も。為末先生に「ゲームを作ったら誰が喜んでいますか?」と聞かれ「子どもが面白いゲームだなと喜んでいます」と堂々と答え、為末先生を感心させていました。

また、ある男子が「僕の夢は陸上短距離走でオリンピックでトップ10に入ることです。日本人で短距離走で世界トップ10に入る人はあまりいないので、僕がなってみなさんが誇れる存在になりたいです。 しかし、このような夢をかなえるのはすごく難しいので、40歳、50歳まで競技を続けていくことを一番の夢にしたいです。僕には今ひとつの夢の階段しかないので、これからいろいろな階段を作っていき、多くの夢を叶えていきたいと思っています」 と発表すると、為末先生も思わず「カンペキです!」と感動していました。



まとめ 

最後に、為末先生からメッセージが贈られました。
「夢って紙にちゃんと書くと、自分はこんな風になりたいと思っていたんだな、友達がそんな夢を持っていたんだなってことがよくわかるんです。これからも夢を友達にどんどん宣言してください。そして友達の夢を応援してください。1人でもいいから自分の夢を応援してくれる人がいると、人ってがんばれるんですよ。

それから、大人が『夢は何ですか?』と聞く時は職業のことを聞いています。先生やスポーツ選手、ユーチューバーなど、みんなが今日発表してくれた夢も全部、職業ですね。 でも本当に大切なのは、職業を通じて自分が何をしたいのかを考えるということ。ユーチューバーになって誰を喜ばせたいのか、言語聴覚士になってどんな人を助けたいのか、自分がそれをすることで誰が喜んでいるのかを意識することが大事なんです。 途中で夢が変わってもいいから、こんな風になりたいな、こんな人を喜ばせたいなと考え続けてほしいなと思います。