2時間目は、みんなで「夢」について話し合う授業です。
浜崎小学校では中学進学を目前に控えた小学6年生を対象に、今の自分を見つめ直す『自分発見プロジェクト』と呼ばれる授業を行っています。 その一環として迎えた話し合いの時間は、将来就きたい職業や達成したい夢、それを実現するまでのプロセスを、子ども達同士で話し合ってもらおうという試みです。


制服に着替え、正座姿で静かに話を聞く子ども達に、まずは為末先生から話し合いのルール説明がありました。「どう思われるかではなく、自分がどう思うかを大事にする」 「いつもよりちょっとだけ勇気を出す」など、いくつかのポイントが挙げられましたが、中でも為末先生が強調したのは「あえて少数派になってみる」ということ。 そこには「グループ内で1つ意見が出ると、みんながそれに偏ってしまうことがある。そんな時に逆の意見をぶつけることで、いろんな意見が出やすくなる」という先生の狙いがあります。

事前授業での夢の発表  -自分の考えを人前で話す-

授業に先駆けて、子ども達には事前に「夢の階段シート」が配られ、自分の夢について書いてきてもらいました。まずは考えてきてもらった内容について何人かの子どもに発表してもらうと、 「薬剤師になって薬を作りたい」「魚を育てるのが好きだから水族館で働きたい」 「看護師になって人を救ってみたい」など、さまざまな夢が飛び出しました。


話し合い -夢のストーリーをみんなで話し合う-

発表が終わると、いよいよ話し合いです。「夢をかなえるまでのストーリーをできるだけ具体的に書いてください。それから自分が夢をかなえた時に、自分以外のどんな人がどんな風に感じているかも考えてみてください」 と為末先生から課題が出され、4〜5人のグループに分かれて15分間の話し合いがスタートしました。

『自分発見プロジェクト』を通じて、将来なりたい職業について考えてきた子ども達も、夢をかなえるためにどうすればいいのかを考えるのは初めてのこと。 戸惑う子どももいる中、為末先生が各グループをまわって1人1人に声をかけていきます。

ある男子の夢が「お金もうけ」と知ると、「いいねえ」と楽しそうな為末先生。「どうやってお金もうけするの? 何の仕事をする?」と質問すると「宝くじ」と答える男子に「宝くじは仕事じゃないよ」と大爆笑。
また大工になりたいという男子とは「どんな家を作りたい?」「壊れない家」「その家はいつ作る?」「18歳」「それはちょっと早くないか? 80年あるんだよ、人生は」と、なんとも楽しい会話が続きます。
プロ野球選手になりたいという子には「どうして野球がいいの?」と質問。すると少し考えて、「みんなで一緒にできるのがいい」という答えが返ってきました。 ユーチューバーになりたいという子には「いいねえ、世界70億人が相手だよ! どんな番組を作りたい? その番組は何人ぐらいの視聴者がいると思う?」と興味津々でインタビュー。 次々に問いかけてくる為末先生に対して、子ども達は懸命に考えて答え、それに対してまわりの子ども達が意見を言うという風に、話しやすい雰囲気が生まれて会話がどんどん盛り上がっていきました。

発表 -夢を具体化し、目標を設定する-

話し合いが終わったら、みんなで考えた「夢のストーリー」の発表です。「発表したい人!」と為末先生から声がかかると、子ども達から次々と手が挙がりました。

「中学・高校とバレー部に入って18歳で日本代表のレギュラーになり、世界で活躍する選手になる。そしてみんなに信頼される選手になって、家族を喜ばせたいです」 という子どもに「日本代表になった時のニックネームは何ですか?」と為末先生が尋ねると、みんなから「ストロングひーちゃん!」という声が。 また「中学・高校と陸上部に入って数々の大会で上位入賞をはたし、21歳で佐賀開催の国体に出場して陸上競技で優勝したいです。そして子ども達に陸上の楽しさを教えて、 親や陸上を教えてくれた人たちに恩返しがしたいです」という発表に感心した為末先生が「僕が書かせました(笑)」とコメントすると、会場から笑いが。

他にも「高校で化学部に入って、21歳で大手会社のバイオ技術者になり、二酸化炭素を減らすなどの新しい技術を発明して世界の人たちを喜ばせたい」 「高校卒業後に美容専門学校に行って、25歳で一流の美容師になり、1年後に自分の店を持ってお客さんに喜ばれて予約でいっぱいのお店にしたい。 チェーンは3店舗くらい」など、話し合いを通じて具体的になった子ども達の夢が次々に発表されました。

後半では「体が大きかったので相撲取りを目指していた」横井先生や、「体が小さかったのでボートレーサーになろうと思っていた」小山先生など、 普段聞くことのできない先生たちの夢も発表されて大盛り上がり! 最後まで笑顔の絶えない、楽しい授業となりました。

まとめ 

最後に、為末先生からメッセージが贈られました。 「今日のみんなの発表を聞いて、日本は大丈夫だという気がしました。本当にたくさんの夢が出てきて、僕もとても勉強になりました。みんなに1つ覚えておいてほしいのは、今日みんなが夢だと言ったのは、だいたい職業だということですね。でも仕事は目的ではなくて手段なんです。たとえば学校の先生はみんなにすばらしい大人になってもらうのが目的であって、そのために学校の先生になっているんです。だからみんなにも、プログラマーになることで誰を喜ばせたいか、プロ野球選手になることでどんなことを伝えられるか、夢の奥にあることをこれから考えてほしいなと思っています。」 最後にみんなで記念撮影をして、2時間目の授業は終了となりました。


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