

- 谷川真理
(以下谷川)
- 松木さんがサッカーをやられていた頃は、まだサッカーはメジャースポーツではない時代だったと思いますが、トレーニングはどうされていたんですか?
- 松木安太郎
(以下松木)
- 僕は当時から小柄でしたので、高校に入るとすぐに陸上競技系のトレーニング、主に投擲や幅跳びなどのパワー系のトレーニングを始めました。
- 谷川
- 筋力トレーニング系ですね。
- 松木
- そうですね。相手チームの選手とぶつかったときに倒れないような体をつくる、というのが主な目的でした。
- 谷川
- 海外の選手と対戦するときに、日本人はどうしても体格差がありますよね。
- 松木
- そうですね。体格差をカバーする意味ももちろんありました。そういう意味では、当時今のようにトレーニング理論がしっかり確立されていて情報があれば、もっと合理的な体作りができたな、と思いますよね。当時は鉄下駄を履いたり、チョッキのポケットに砂袋を入れてジャンプする、というのまでありましたから(笑)。
- 谷川
- 今だったらありえないですよね(笑)。食事に関しても昔と今は違いますか?
- 松木
- 今の日本代表の選手になると、専属の調理師もいますし、危ないものは口に入らないようになっていますね。僕らの時代は出されたものを食べなければいけないし、それでお腹を壊す選手や思うように動けない選手は「ダメなやつだ」といわれる時代でした。だから自分でコントロールするのが第一でしたよ。
- 谷川
- 大きい試合の前に緊張してしまって調子が悪い、などはないんですか?
- 松木
- それは全くありません。だってこっちはむしろ出たいわけですから「何で使わないんだ!早く使え!」という世界ですよ(笑)。
- 谷川
- アジアカップでは選手のみなさんにヘアメイクがついていた、という報道もありましたよね。
- 松木
- すごいことですよね。サッカーに夢を与えることができるじゃないですか。そういうのもプロのアスリートの仕事ですからね。特に子供は、プロ選手に憧れるところからスポーツに触れていくものですから。
- 谷川
- 「あのようなプレーがしたい」と思うから練習をするようなるわけですものね。
- 松木
- 子供は一度嫌いになってしまったスポーツは二度とやらないんですよ。良い思い出がないと続かないと思います。
- 谷川
- 松木さんは子供たちの指導もされていると思いますが、どのように接しているんですか?
- 松木
- 最初は遊びから入りますね。で「上手くなりたい」という子に対しては「練習がいちばん」ということをわからせるようにしています。プロの選手だって最初から上手だった人は皆無ですから。
- 谷川
- 確かに。
- 松木
- 本田(圭祐)選手みたいな選手にしたってそうです。急に上達することは絶対にありません。子供時代の練習の積み重ねがベースで、その状態がそのまま大人になって、精度とスピードが上がるというだけで。
- 谷川
- 中高校生になると指導も全然違いますか?
- 松木
- そうですね。中学生は少し社会的にもなって、自分を認めてくれるコーチの言うことを聞くようになる。高校生はさらに現実的になって、嘘をついてもわかってしまう。だからコミュニケーションがより大事になりますね。
- 谷川
- 試合に出たくても出られないという選手がいるわけですから、監督やコーチも大変ですよね。
- 松木
- 今回のアジアカップで言うと、ザッケローニ監督が控え選手を含めた代表選手の選考条件の中でも、特に協調性を重視したそうです。監督としての期間が短いので、和を乱すような性格の選手は候補から外したそうですよ。だから選手も監督も「団結」や「成長」、「チーム一丸になって」とコメントしていて、それが今回のチームの特徴だったと思います。
- 谷川
- 海外と比べて、日本のサッカー選手の育成環境はどうですか?
- 松木
- 環境的には恵まれていると思います。でも日本は学校の授業がハードですから、時間的な部分、つまり練習量では海外には敵わないですよね。
- 谷川
- なるほど。
- 松木
- あとは指導者ですよね。良い大人がいないと良い選手は育ちませんから。
- 谷川
- 育成期間中の食事についてはどうでしょうか?
- 松木
- ユースの監督をやっている時にいちばんの問題は選手の食事でした。放課後5時から練習して終了が8時。本当は中高生の選手が5時から8時までトレーニングをしたら、すぐに質の高い栄養分を吸収しなくてはいけないんです。でも、彼らはそこから1時間かけて家に帰らなくてはいけない。そしてその1時間の間にスナック菓子などを食べてしまうわけですよ。それで家に帰ると、母親が用意した食事は食べられなくなってしまう。これではダメなんです。せっかくいいトレーニングをしても意味がない。
- 谷川
- まだまだカラダが成長しているときですからね。
- 松木
- だから、保護者の方とのミーティングは大事ですよね。食事を出す側が何に気をつけたらよいのか、というのを分かってもらうためにも。
- 谷川
- 学校の指導者の方もそうですよね。トレーニングひとつやるにしても、これだけのトレーニングをしたらこれだけの食事を取るっていう理論が体づくりには特に大事ですよね。
- 松木
- 成長期は特にそうですね。
- 谷川
- 最後に、松木さんがこれからのサッカー選手に望むことはなんでしょうか?
- 松木
- 「サッカーの楽しさ」を覚えていて欲しいです。プロ選手になったら、否が応でも勝負しなければいけない時がやってくる。その時に楽しさを知っている選手じゃないとうまくいかないんです。そのためには、やっぱり育成と強化のバランスですね。バランスが悪いと早い段階でやめてしまう。育成段階から強化段階に入った時に踏ん張れる子は良い選手になります。なんでもバランスが大事、ということですね。
![]() 監修:柏原幸代 かしわばら ゆきよ |
【食べることはトレーニング】
体が大きく成長する中学〜高校生は、小学生時代と比べてもエネルギーの必要量が格段に増える時期です。さらに、スポーツをがんばる子供たちには、成長に使われるエネルギーに加え、練習などで消費したエネルギーをしっかり補充するために高カロリーの食事が必要です。そのとき、しっかりとるべき食品は何といっても‘ごはん’です。最近は、おかずの品数が多く,ボリュームがあるほうがバランスがいいと考える傾向がありますが、おかずよりもごはんを中心にしっかりと量を食べることが、強くて持久力のある体を作る秘訣です。練習後にお腹が空くと、お菓子やファーストフードなどに手が伸びがちですが、それでは栄養不足!強くなることはできません。ちなみに、練習前後の間食にもおにぎりがおすすめです。
激しいトレーニングをすると疲れから食べずに寝てしまったり、食欲が落ちて食事量が少なくなるケースもよくあります。必要なエネルギーや栄養素が不足すると、怪我や故障が増えるだけでなく、発育にも悪影響。スポーツにおいては、丈夫な骨格としなやかな筋肉をつくること、体格がいいことも1つの能力といえます。食事は「お腹が空いたから食べるもの」ではなく「トレーニングの一環として強くなるために栄養をとる」という意識付けはとても有効です。「食べることで強くなれる」という意識が生まれると、食べ物への興味も沸いてきます。さらに不思議なことに、どんなにバランスのよい食事でも、なんとなく出されたものを食べるのと、「これはこんな風に体にいいんだな」と意識して食べるのでは体の変化が違うのです。食事は、親や栄養士などまわりのサポーターが知識を持つだけではなく、本人の‘意識’も重要な要素なんですよ。
しっかりごはんには、パスタも有効。ソースは栄養バランスを意識して、高カロリーになりすぎないように工夫しましょう。
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