世界の小麦粉料理 第18回

メキシコの夕日

真っ赤な夕日が沈む頃、大きなつばのソンブレロを被ったおじさんがサボテンを背にギターを弾いている、そんなイメージがあるメキシコ。
昨今、人口はますます都市部に集中しているそうで、ちょっと都会をはずれたら、こんな光景がまだみられるかもしれません。

日本ではメキシコ料理は身近なものになってきており、大きな肉の塊をナイフでそぎとって、トルティーヤの上にのせてくれる"パストールタコス"の移動車や屋台なども街角でみかけるようになりました。 メキシコ人の主食とも言える"トルティーヤ"は今ではスーパーなどでも気軽に買えます。
ハバネロやハラペーニョなどの激辛唐辛子も有名ですね。日本でも有名なハバネロの辛さは、30万スコヴィル(辛さの単位)。これは30万倍の水にまぜてようやく辛味がなくなることを表しています。ちなみにタバスコは5千スコヴィルだそうです。 今から6000年前、メキシコ中央高原の農耕集落で栽培が始まった唐辛子は、1492年コロンブスの新大陸発見を機にヨーロッパに渡り、そこから世界各国、アジアに至るまで栽培がされるようになりました。

コロンブスの到来は、メキシコの食文化に他にも様々な影響をもたらしました。
後にスペインの植民地となったアメリカ大陸の先住民(インディオ)達は、スペイン人にとって、最も重要な食料のひとつであった「小麦粉」の栽培を始めます。 小麦がこの地に根付くまでの道のりは、必ずしも平坦とは言えなかったようですが、現代のメキシコでは、普通に美味しいパンが手に入り、惣菜系のパン、甘~い菓子パンなどの種類も多く、特に都市部では、かなりパン食も浸透しているそうです。

メキシコと言うと、やはり主食はトウモロコシ、平焼きで円形状の"トルティーヤ"が思い浮かびますが、メキシコ北部にはコムギ産地があり、小麦粉が原料のトルティーヤも多くみられます。"フラワー・トルティーヤ"とネーミングがついてパッケージされたものを日本でもみかけます。トウモロコシのものより、癖がなく、柔らかくて、どちらかというと、小麦粉のものの方が、日本人向きなのかもしれません。

ところで、トルティーヤはタコスの一部であることを、知っていましたか?
・トルティーヤはクレープのように柔らかい生地。
・一方、タコスはパリパリと硬い生地に具をのせて食べるもの。
こう思っていた人が多いのではないでしょうか。
メキシコでは、薄く焼いたトウモロコシの生地に具をのせたり、まいたりした料理の総称を"タコス"といいます。そして、具を載せる生地はクレープのようなものも、パリパリと硬いものも"トルティーヤ"といいます。
何故、パリパリと硬いものだけがタコスと思われているのか、には理由があります。
実はトウモロコシのパリパリの皮に挽き肉や生野菜をのせたタコスは、1940年代にアメリカのテキサス(TEX-MEX・テックスメックス)でつくられたもので、それが世界中に広がり、このアメリカンタコスこそがタコスであると思われていたのです。
このタコスが原型となり、日本で誕生したのが、ご存知、沖縄名物の"タコライス"。タコスの具をご飯の上にのせるタコライスは第二次世界大戦後、米軍基地周辺のレストランを中心に広まってきたメニューです。

また、最近、日本でも流行のラップサンドもメキシコ料理のひとつです。こちらは小麦粉が原料とされる柔らかいタイプのトルティーヤが使用されていることがほとんどです。コンビニで買えるブリトーもラップサンドと同じものです。(このブリトーも、テキサス発のメキシコ料理です。)

トウモロコシのトルティーヤも、もちろん美味しいのですが、今回のレシピは小麦粉のトルティーヤをご紹介します。小麦粉で作るタイプの方が、生地もこね易く、伸ばしやすいと思います。フライパンで焼けるのも、ご家庭で試すのには気軽で良いですね。メキシコ料理の特徴のひとつである、「サルサ」も是非手作りしてお試しください。ハバネロやハラペーニョもフレッシュなものが、日本でも入手しやすくなりました。量を加減して、お好みの辛さでどうぞ。
ちなみにサルサはソースという意味。よく"サルサソース"という言い方を耳にしますが、これって意味が重複しているので、おかしな日本語かもしれないですね。


参考文献
・コムギ粉料理探究事典(東京堂出版)
・世界の食文化中南米(農文協)力
・本格メキシコ料理の調理技術(旭屋出版)
・めきめきメキシコ(スリーエーネットワーク)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

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