世界の小麦粉料理 第17回

日本では1980年代後半から、エスニックブームが起こり一躍タイやベトナムなどの東南アジアの料理が注目されました。エスニック料理という言葉は、1960年代に、アメリカで使われ始めた言葉で、東南アジアのみならず、中南米、アフリカなどの主にスパイス(香辛料)の利いた料理をいいます。
トム・ヤム・クンや生春巻きなどの独特の辛さや香りのとりこになった方もたくさんいらっしゃると思います。

ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンなど、東南アジアの国々は一年中高温で雨季と乾季がはっきりと分かれていて、古くから稲作が盛んでした。湿気に弱い小麦の栽培はほとんど行っていません。麺やスィーツなど一般的には小麦粉が使われる料理でも、米粉を使ったものが多くみられます。
米を主食とするこれらの国々で小麦粉は食べられているのでしょうか。

ベトナムは、かつてフランスの植民地だったこともあり、フランスパン(バケット、バタール)をよく食べます。有名なのが、“バン・ミー・ティッツ”。十数年前、ベトナム旅行をした時にも、ベトナム人の添乗員が「これは是非食べてください!」と、屋台で売られているこのフランスパンのサンドウィッチを勧めてくれました。レバパテや生野菜、唐辛子、なます、香菜などをサンドした、何ともエスニックな香りがするサンドウィッチ。パリジャンともまた違った味わいで、とっても美味しかったことを覚えています。
日本人の観光客も増えてきた頃で、ガイドさんは、一生懸命日本語の勉強をしていました。特に同行した関西人の友人には、何かと「関西弁では何て言うの?」と聞いていました。説明の合い間に関西弁を交えるととてもうけがよいのだと話していました。

タイでは、流暢に日本語をしゃべる人が沢山いて、セールスを始め、至る所日本語で話しかけられました。タイ料理は、ちょっと辛いものが多いですが、野菜たっぷりのヘルシーなイメージで特に女性に人気です。
街を歩いていると道端に、日本でもおなじみのタコ焼き風の屋台が。タコ焼き器のような鋳物製の焼き器に生地を流し、具を散らし、半円形のものを合わせて丸くし、トレーに並べて売っています。“カノム・クロック”です。ほんと、見た目はたこ焼きそのもの!(ふたつを合わせる前の半円形をみると明石焼きかな。)米粉と小麦粉、ココナッツミルク、砂糖を混ぜ合わせた生地に、青ねぎやコーン、エビなど、様々な具を入れて焼きます。米粉だけだと硬くなり過ぎるので、小麦粉と組み合わせます。外はカリっと、中は柔らかく、とろっとした食感です。
でも、ココナッツミルク風味の甘い生地に、ねぎなどのおかず系具材や塩を加えるのには、最初は多少違和感がありました。これはおやつなのだと聞いて更に二つ、三つ食べてみると、意外と病みつきになるような味わい。“甘じょっぱい”塩キャラメルなどが流行っている昨今には、素直に受け入れられるのかもしれません。

マレーシアは南国フルーツが200種類以上と豊富な国。ドリアンやランプータン、マンゴスチン、ジャックフルーツなど、見た目も独特なトロピカルフルーツは日本でもよく見かけるようになりました。バナナもトロピカルフルーツのひとつです。バナナは青いままで輸入されますが、日本では黄色く軽く熟してからスーパーなどで売られることがほとんどです。今回ご紹介した“ピサン・ゴレン”(マレーシア風揚げバナナ)は、完熟した柔らかいバナナだと、揚げているうちに溶けてしまいますので、なるべく青めで硬いバナナで作ると良いでしょう。東南アジア系の輸入食材を扱っているお店では青いバナナも入手できます。パパイヤやバナナなどは、日本ではフルーツの感覚ですが、東南アジアでは青いうちは野菜として、サラダや揚げ物などのお料理によく使われます。衣は、米粉だけだとさらっとしてうまくバナナにからみませんので、小麦粉を加えて作ります。そうすると外はカリッとしつつも硬くなり過ぎず、ふわっとした衣になり、美味しく頂けます。

お箸で食べる食事スタイル、野菜も豊富でヘルシーな東南アジア料理(エスニック料理)、小麦粉と米粉を組み合わせたいわゆる“生地”の粉もんスィーツも多いアジアンスィーツは、これからも日本の食文化に根強く残っていくのではないでしょうか。ご家庭で気軽に楽しめるものも多いので、チャレンジしてみてください。


参考文献
・おうちでアジア「おやつ」(青春出版社)
・世界の食文化タイ(農文協)
・世界の食文化ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー(農文協)
・世界の味探究事典(東京堂出版)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

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