世界の小麦粉料理 第16回

トルコ料理は、世界三大料理のひとつと言われています。
ケバブや豆腐料理は有名ですが、正直トルコ料理が世界三大料理といわれてもそれほどぴんとこないかもしれません。
日本人にとってあまり馴染みの多くないトルコ料理、では世界三大料理はどうやって選ばれたのでしょう。

世界の人々を、使われている“文字”で分類すると、ローマ字圏、漢字圏、アラビア文字圏に大別されます。
世界3大料理は、その3つのグループの代表選手から選ばれたといわれています。ローマ字圏からは「フランス料理」、漢字圏から「中華料理」、そしてアラビア文字圏からは「トルコ料理」です。
食文化(食の作法)もそれぞれ特徴があります。
漢字圏は古くから箸を使って食べていましたが、ローマ字圏、アラビア文字圏では16世紀頃までは指でつまんで食べる指食文化でした。
17世紀頃から、ローマ字圏はフォーク食文化へと変わっていきました。
アラビア文字圏では、長らく指食であり続け、イスラム教に由来する食のタブーなど、特色のある食文化を築きあげました。(トルコは現在も90%以上がイスラム教徒と言われています。)
もっとも、今ではイスラム世界も、少なくとも都市部ではほとんどフォーク(+スプーン)を使うようになり、指食を文化として継承しているといえるのは唯一インドだけのようです。

三大料理に選ばれるほどのトルコ料理は、中央アジアの遊牧民の食文化をルーツとし、オスマン帝国(20世紀はじめに消滅)の発展と共に、地の利を活かし東西の様々な食文化を取り入れ、宮廷料理として非常に洗練されたものとなりました。また例えばナスの料理だけでも40種類以上あるというバリエーション豊富な料理をつくりだしました。

トルコの主食は小麦(パン)、トルコは小麦粉の原産地でもあるので、パンの種類や小麦粉を使った料理は豊富です。
“ドルマ”のようなピーマンやトマトにお米を詰めたものや、“ピラウ”(ピラフ)など、お米を使った料理も沢山ありますが、あくまでもこれは主食でなく、副菜。パンのおかずとして、ごはんを食べます。
パンには、フランスパンのようなラグビーボール形のものや、ナンやピタパンのような薄いおやき風のもの(ちなみにギリシャ語の「ピタ」がトルコ語では「ピデ」に、イタリア語では「ピッツァ」になります)、日本のねぎお焼きのような、挽肉などの具を薄くのばした生地にのせて、外側からくるくると巻いて、大きな渦巻状に成形して焼いた“アチマ”などがあります。

トルコ民族はかつて草原の遊牧民であり、その遊牧民として今も残る食文化の象徴が、チーズやヨーグルトなどの乳製品です。日本の「十人十色」とおなじ意味でトルコでは「ヨーグルトの使い方は人さまざま」ということわざがあります。それこそ、サラダにも肉料理にも、温かいスープにまでもヨーグルトは調味料として、広く用いられています。
ケバブが有名なトルコは、肉食が中心のように思えますが、肉よりも動物質としては乳製品、植物質としては豆類が、主要なたんぱく源となっていて、豆料理のバリエーションも豊富です。日本では大豆や小豆がポピュラーですが、白いんげん豆やレンズ豆をよく食べます。ディップやサラダ、スープなど様々な料理に用います。

トルコの人々が愛する最もポピュラーな飲み物は、インドから広まった紅茶=チャイです。、いわゆる西洋式のティーカップではなく、二寸ばかりの高さの小ぶりなガラス製のグラス“チャイ・フィンジャヌ”というものに注ぎます。
人に供する時は、受け皿にのせ、小さな匙に角砂糖が添えられます。

今回ご紹介するトルコ料理は、“ピデ”と“マントゥ”。
マントゥは、水餃子やラビオリのようなもの。挽肉を小麦粉で作った生地で包み、トマトソースやヨーグルトソースをかけていただきます。最も特徴的なのはその大きさ!
手の大きな私は2.5cm角のレシピにしましたが、1~2cm角のもっと小さいマントゥをトルコのアンネ(ママ)は作るそうです。食べ物を小ぶりに仕上げるのは、かつての指食文化の名残でしょうか。ヨーグルトはトマトソースとの相性も良く、トルコ料理独特の美味しさを堪能できます。
色使いや柄が特徴的な、かわいいトルコ食器にのせて演出するとより気分も盛り上がりますよ。

参考文献
・家庭で作れるトルコ料理(河出書房新社)
・世界の食文化トルコ(農文協)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

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