世界の小麦粉料理 第10回

米食文化の日本ですが、麺料理も週に数回は摂っているのではないでしょうか。
何でも良いものを取り入れ、そして日本独特の食に発展させるアイデア力と食に対する貪欲さのある日本人は、そうめん、うどん、そば、ラーメン、パスタ等々、色々な麺を食しています。

日本食と思いがちなそうめんやそばは元々は中国から伝来されたものです。
中国では、唐の時代(618~907年)から麺類を食べていたと言われています。日本では平安中期から鎌倉中期にかけての頃です。
630~894年の260余年の間に、遣唐使が10数回にわたり派遣されました。
そこから様々なものが中国から伝えられることとなるのですが、その中のひとつに“麺類”があります。小麦粉を練ってひも状にのばす“うどん”は早いうちから現代のうどんに近いものでしたが、“そば”が現代のような細長い麺になるのは江戸時代の直前であったといわれています。ともあれ麺好きの日本人は各地方の風土や嗜好に合わせて、今日の郷土料理となる多種多様な麺料理を作り出しました。

全国の郷土料理を見てみると、行事に絡んだ麺料理が数々あります。
代表的なものは年越しそば。江戸を中心に発展していったそばですが、大晦日にそばを食べるようになったのは江戸時代の中期からだそうです。長く伸びるそばは“長寿”を意味し、身代が長く伸びることを願って食べられるとか、そばは新陳代謝を高める食物繊維が多いので、体内をきれいにする、つまり身体も大掃除するなど、色々な説があるようです。

昨今、ご当地グルメが人気を浴びており、東京には様々な郷土料理を頂けるお店が沢山有り、またTVや雑誌、インターネットなどでも情報が飛び交っています。
郷土料理には、先ほどの麺のように中国や欧米などの外来食を巧みに取り入れて発展したものや、その土地の名産から生まれたもの、また同じ食材でもその土地の気候によって、生で新鮮なうちに食べられるもの、調味料などに漬けて保存食にもなるものなど、各地方で特徴が様々です。

今回ご紹介する、ソーメン(ソーミン)チャンプルーは沖縄の郷土料理。ソーミンプットルーとも言われます。そうめんと言えば薬味を入れてめんつゆでツルツルと食べるのが主と思っていた私ですが、初めてこれを食べた時はそうめんにもこんな食べ方があったのかと驚きました。
チャンプルーとは沖縄の方言で「混ぜこぜにした」という意味で、ゴーヤや炒めてもくずれない沖縄独特の硬い豆腐を炒めたものなど、チャンプルーという名のつく料理はバリエーションがいっぱいあります。
夏が長い沖縄では、暑さを乗り切るエネルギーをつけるためにそうめんに豚肉やねぎを加えて油で炒めた料理が生まれたのでしょう。

もうひとつはひっつみ鍋。青森県南部、岩手県北部地方の郷土料理です。ひっつみとは「引っ摘む」の方言。すいとんのようなものと言えば、わかりやすいでしょうか。
地の食材をだし汁で煮て、その中に小麦粉をねった生地を水の中で引っ張り、薄くて平らな短めの麺状にして直接鍋の中に入れて煮込みます。冬の寒さの厳しい地方にはこのような身体の芯から温まるような鍋ものの郷土料理が多く見受けられます。

郷土料理や日本の麺料理をあげると本当に多種多様で紹介しきれませんが、各地方に足を運んでその土地土地のものを味わうも良し、地方出身の友達同士で郷土料理を作り合う、教え合うも良し、ブームと言うだけでなく、本当の意味で郷土料理が今後も若い世代にどんどんと伝承されていけば良いなと思います。

参考文献
・コムギ粉の食文化史(朝倉書店)
・コムギ粉料理探求事典(東京堂出版)
・日本の「行事」と「食」のしきたり(青春出版社)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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