世界の小麦粉料理 第8回

昨今の韓流ブームや日韓ワールドカップの開催など、元々距離的には近い国ではありますが、韓国はぐんと身近な国だと感じます。
歴史を振り返ると、過去には色々な確執があったことがわかりますが、今回はこれはさておき、日本の食卓にも登場回数を増やしている韓国の食文化について触れていきます。

何と言ってもまっさきに思い浮かぶのはキムチ。
唐辛子が韓国に伝わったのは、16世紀になってからです。それまでは醤油や味噌、塩辛などで作る大根のお漬物のようなものだったそうです。キムチの語源は“沈菜”(チムチェ)=野菜を塩水で漬けるという意味なんだそうです。
唐辛子が国内で栽培されるようになっても、キムチの主な材料は大根やきゅうりなどであり、白菜が栽培されたのはおよそ300年後の19世紀に入ってからのことで、白菜はキムチの元祖ではないのです。

日本とはちょっと違う韓国の食文化をご紹介しましょう。
5年前、韓国へ旅行したとき、まだ注文もしていない内から数々のキムチなどの副菜がどんどん出てきました。日本で言うお通しのようなものなのか、はたまた牛丼屋の紅生姜か、とにかく食べ放題でした。今も多くの飲食店で続いているそうです。

また宮廷料理の伝統を伝承したとされる“韓定食(ハンヂョンシク)”を食べに行ったら、テーブルもない畳敷きの広いお座敷に通されました。座布団に座らされ、何か落ち着かないままポツンと待っていると、とにかくいっぱいの皿数の料理がなんとテーブルごと運ばれてきました。料理が出てきて納得、これはテーブルごとサービングした方が断然効率が良いのです。
日本では食べ残しが失礼とされていますが、沢山のおかずが小皿に盛られてテーブルに並ぶ韓国料理では残してしまうことは問題とされません。しかし、特定のおかずに全く箸をつけないのは失礼にあたるそうです。これはお客様が来たときに、迎える側はたとえ食べ物が乏しくともありったけの食べ物を出してもてなすべきとし、そこで客側はその後の家族の食事のことを考え、全部食べないで残しておくという、お互いを思いやる気持ちから生まれた作法だそうです。
食べ物が豊富になった現代では、必ず残さなければならないという作法はなくなったようで、また飲食店などで食べきれない量のおかずを並べるのはもったいないという議論もでているようです。

日本と同じ箸文化ですが、韓国ではスプーンが一緒にセットされます。
韓国ではスープ(汁物)はもちろん、ご飯もスプーンで食べます。箸はおかずを食べるものとされています。ちなみにスプーンは“スッカラ”、箸は“チョッカラ”とよばれ、どちらも金属性のものです。これは昔、王族の食事に毒が盛られていないかどうか、銀製の箸で(銀は毒で変色する性質がある)食す前に毒確認をしていた名残なのだそうです。
ちょっと柄が長いのは、韓国では食器を持ち上げないで食べるのが作法なので、遠くの器のものが取りやすいためです。ご飯が主食で箸文化、日本と共通している部分は多いものも、食べ方の作法は国それぞれかなり違うものだととても興味深いものですね。

また“チヂミ”も日本ではおなじみの韓国料理。韓国版お好み焼きとよく和訳されていますが、日本のお好み焼きともやはりちょっと違います。日本のそれよりも表面はたっぷりの油で焼かれカリっとし、生地は薄くもっちりとしています。
今回ご紹介する“ジョン”は具材を生地に混ぜ込まず、具を生地や卵につけて焼いたり、重ね焼きしたスタイルのもの。ジョン(煎)は“焼く”という意味なので、チヂミにもあてはまるため、韓国ではチヂミもジョンと呼ばれている地域もあるそうです。このあさりとねぎのチヂミは大体どこへ行っても“パジョン”と呼ばれています。ちなみにパジョンの“パ”はあさりなどの魚介類を指すようです。ご飯も“パ”と発音するし、う~ん、韓国語は難しい。混乱しそう。

韓国の食スタイルは日本と似ているようで、ちょっと違います。でも、味付けも料理法も私達日本人にはとっても馴染みやすく、普段の食生活にも取り入れやすいものが多いと思います。野菜も沢山とれてヘルシーなイメージですし、これからももっと勉強してレパートリーに取り入れたいなと思います。


参考文献
・テーブルマナーの基本(プラザ出版)
・世界の食文化韓国(農文協)
・キム・ヨンジャの韓国料理のおいしい食卓

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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