世界の小麦粉料理 第5回

質実剛健、背筋のピンと伸びた品のあるジェントルマンがいて、かしこまった国のイメージの一方で、アンティークな食器やちょっとした小物などはすごく可愛いものが多く、紅茶がとても美味しい国、イギリスは私にとっての憧れの国だったりします。
食事は美味しいものが無い、なんて言う声もありますが、スコーンやシェパーズパイ、フィッシュ&チップス、ローストビーフ・・・色々と美味しいものが思い浮かびます。
でも・・・良く考えてみると、どれもシンプルなものが多いのかな。

山高帽をかぶる英国紳士に見えるといわれ、日本では“イギリスパン”と呼ばれるあの山型のパンは、四角い食パンよりもちょっと高級でオシャレなイメージがあって、子供の頃は母によくリクエストしていました。
でも、この山型のパンがイギリスから日本に伝えられた時は、どうも切りにくそうだ、食べにくそうだ、という声があがり、じきに山をなくした角型のパンが生まれたそうです。
イギリスでも角型のパンはあります。サンドイッチ用にと開発されたそうですが、最近では、売られているのはこの角型のパンの方が多いとか。
“サンドイッチ”は18世紀イギリスのサンドイッチ伯爵の名前から由来しているという話は有名ですね。多忙な伯爵は、時間が取れると、バクチに興じ、食事をする間も惜しんだために、パンにコールドビーフを挟んだものを作らせて食べながらゲームをしていたという伝説です。
実は手を汚さないように肉料理などをパンにのせて食べるということは、古代ローマ時代からあったとも言われているようです。

ご飯とおかずのように、主食と主菜などのハッキリと区別がある日本では、甘くない角型パンは“食事のパン”という意味で“食パン”と呼ばれるようになりました。

スコーンやビスケット、サンドイッチがそれぞれにのった3段プレートも私の憧れのひとつで、アフタヌーンティーというとこのスタイルを思い浮かべます。実は3段プレートはホテルなどで配給しやすいように考えられたもののようで、家庭では主に、銀トレーや大皿に白いレースを敷いて、それぞれを盛り付け、高級なポット、同じ銘柄のカップやシュガーポット、ミルクピッチャーなどがテーブルクロスをかけたテーブルに並べられるそうです。何とも美しく、優雅な光景が思い浮かびます。
しかし、色々と調べてみると、アフタヌーンティーは元々は間食という概念ではなく、これだけの食事だったり、甘い紅茶は力仕事の多い労働者にとっては、即効性のカロリー補給として不可欠であった、などという現実的な話も数々出てきます。
私にとってのアフタヌーンティーはイギリスの食文化の変遷の中で確立した現代のハイソなイメージを尊重したいと思います。

初めてスコーンを食べたのは、もうずいぶん前のことですが、パンなのかお菓子(ケーキ)なのか、ハッキリしなくて甘いもの好きの私としては、正直イマイチという印象でした。しかし、紅茶を習い始め、そこで優雅に丁寧に淹れた紅茶と一緒に供されたスコーンを頂くと、なんて美味しいのだろうといっぺんにスコーン好きになりました。雰囲気に流されやすいというか、単純なんですね。でも、雰囲気づくりというのは食にとって、とても大切なことだと思いませんか。
スコーンにはつきもののクロテッドクリームとジャムを合わせると本当に美味しくなります!そして、焼きたてか、少し温め直して食べた方が断然美味しくなります。難しいようでいて、結構作り方も簡単。水平に割れたのは上手に焼けた証。ここから半分に開きデコボコした割れ目にクリームをつけて、ミルクティーと一緒に頂きます。ほっとしたひと時にストレスも発散されてアフタヌーンティー気分を味わえますよ。気の置けない友達や家族と一緒に会話を楽しみながらお楽しみください。


参考文献
・コムギ粉料理探求事典(東京堂出版)
・パンと麺と日本人(集英社)
・世界の焼きたてパン物語(東京書籍)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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