世界の小麦粉料理 第4回

世界三大料理で真っ先に思い浮かぶのがフランス料理ではないでしょうか。 (ちなみにあとの二つは中華料理、トルコ料理です。)
フランス料理は中世末期、1310年生まれの伝説の料理人タイユブァン(フランス語で書かれたほとんど初めての料理書の著者)らの台頭で料理法が著しく進歩しました。それでも、この頃の料理は、現在と比べればとても慎ましいものだったようです。
その後、17世紀半ば頃から、18世紀にかけて、フランスの宮廷を中心に、料理技術が更に洗練されていき、フランス革命を経て、素材、食事作法など食事のあらゆる面で“美食”と呼ばれるような今日のフランス料理の原型が形成されました。フランス料理はヨーロッパ美食のスタンダードになり、19世紀には美味の頂点に達し、黄金時代を迎えたとされています。

近年(1970年代頃から)は、美食の定義が見直され、今までのバターや脂肪分たっぷりというものから、脂肪分を減らして淡白な味付けになり、簡素化してヘルシー志向へと変化しています。ただし、伝統的なフランス料理の本質は失われてはいません。そこが歴史ある、フランス料理の醍醐味といえます。

フランスと言うと、日本の家庭でもすっかり定着している、バケットやクロワッサン、シュークリームにマドレーヌ、パンやお菓子も美味しいものがいっぱいです。パンやお菓子の原料には小麦粉が使われているものが多くあります。
フランスの小麦粉は軟質系で粘りが少なくグルテンが弱いタイプで、日本の小麦粉に似ています。大型パンが焼きにくいので、蒸気を吹きつけながら直焼きにしたバケットなど(日本で言うフランスパン)が多く食べられるようになりました。

フランスは食料自給率が100%を越しており、国民は値段が高いにも関わらず、外国産より国産のものを好んで買い求めるようです。味はもちろんのこと、質の良い食事を心がける習慣が、根付いているように思います。
また、フランスに旅行した人は口を揃えて言いますが、本場のバケットやクロワッサン、チョコレートはやっぱり美味しい!と・・・。
材料ひとつをとっても質が良いのはもちろん、気候も湿度が少ないので、クロワッサンやバケットも皮がぱりっとしていて、チョコレートも甘ったるく感じず、うまみを堪能できるのでしょうか。
国々で発展していくものと言うのは、その国の風土、気候、歴史、様々な要素や条件を踏まえてマッチしたものが定着し、長きに渡り人々に愛されるものになっていくのだなと感じます。

私が初めて食べたフランス菓子は、マドレーヌ、母が作ってくれた平べったい菊形のものでした。お菓子を勉強し始めてから知ったことですが、この菊型は本来パン・ド・ジェーヌという、アーモンド風味のお菓子に使われる型です。
本来、マドレーヌは貝殻形。小さい頃、小ぶりであの縦線の入った貝殻形のマドレーヌは何だかしゃれていて、ちょっと憧れでした。
フランス、ロレーヌ地方のコメルシーという村で権力者の家でメイドをしていたマドレーヌさんが作ったことがこの名前の由来とか・・・。
生地を作るのは意外にも簡単で、材料も特別なものを使いませんから、ご家庭でもすぐにトライできるお菓子ですが、何と言ってもマドレーヌの決め手はあのぷくっとしたおへその部分。ぷくっとするためには生地を作ったらゆっくりと休ませることが秘訣なのです。うーん、せっかちな人には向かないお菓子かな。フランス菓子は、ゆとりを持って優雅な気分で作るものみたいです。


参考文献
・コムギ粉の食文化史(朝倉書店)
・食の文化を知る事典(東京堂出版)

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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