こうして生まれた 小麦粉料理 塩味から甘い和菓子に 第18回「まんじゅう」 日本中に名物まんじゅうが。 今回はまんじゅうの歴史です。

まんじゅうは、あんを小麦粉の皮等で包んだ蒸し菓子・焼き菓子です。
日本の代表的な和菓子ですが、もともとは、中国で作られました。

中国は古くから、主に北の地方では小麦粉、南の地方では米が主食でした。(現在、中国は小麦、米共に生産量世界一です。)
ヨーロッパでは、パンが主食となっていったのに対し、中国北部では、小麦を麺やまんじゅうの原型であるマントウ(饅頭)にして主食としました。
マントウは小麦粉をパンとは違う発酵(老麺を入れて発酵)で、丸く成型して蒸しあげたものです。今の肉まん、あんまんなどの中華まんの具のないものです。

宗代(960~1279年)の書物「事物起源」によると、三国志の諸葛孔明(181~234年)がマントウ(饅頭)の名の基になったと書かれています。
諸葛孔明は孟の国に出兵した際、川が荒れて渡ることができませんでした。こういう時には、いけにえが必要と考えられていたのですが、孔明は人の代わりに、羊肉、豚肉を小麦粉の生地で包んだものを神に捧げると川は静まり、戦に勝利しました。
饅頭の「饅」は上手に欺くという意味で、人の頭の代わりで神をもうまくだましたことから「饅頭」と呼ばれるようになったそうです。

日本に最初にまんじゅうが伝えられたといわれるのは、鎌倉時代の1240年でした。宗から帰国した禅僧の聖一国師が甘酒をまぜて発酵させた「酒まんじゅう」とよばれるものです。
しかし、より一般的に広がったのは100年後の南北朝時代の1340年、同じ禅僧の林浄院が広めた「奈良まんじゅう」でした。
中国では、豚や羊の肉をまんじゅうの具にしていましたが、日本では、仏教の戒律により肉食が禁止されていました。そこで、日本ではあずきを漉したものを具材としました。今のまんじゅうがこの時代にできたように思えますが、実はこの時代は砂糖がとても高価なものだったので、奈良まんじゅうのあずきのあんは塩で味付けされていました。
それでも塩味のまんじゅうはたいへんな人気だったといいます。

江戸時代の中後期になると、塩あんは砂糖あんに変わっていきました。あずきのあんは日本人の嗜好に合い、全国の城下町に名物まんじゅうが次々と誕生、代表的な和菓子となりました。
肉食が解禁となった明治時代の後半になると肉が具材になる中華まんも食べられるようになりました。
豚肉のはいった中華まんは関東では「肉まん」、関西では「豚まん」とよばれています。
関西では明治維新になるといち早く牛肉を食するようになり、肉といえば牛肉だったため、とくに「豚まん」とことわりを入れる必要があったようです。

「まんじゅうこわい」という落語があります。嫌われ者をこらしめてやろうと、怖いものは何かを聞き出したところ、返事は「まんじゅうがこわい」。それならとばかりたくさんのまんじゅうを嫌われ者に送るが、もくもくと食べるばかり。しゃくにさわるので、次にこわいものは何かと尋ねたら「今度は、濃いお茶がこわい」というオチで終わります。
この話し、実は中国の明(1368~1644年)の時代に原話があり、その話が江戸時代に大阪に伝わり落語ができ、明治時代に東京の落語界にも伝わりました。

「こうして生まれた小麦料理」は今回が最終話。次回より、「新・世界の小麦料理」が始まります。

出典及び参考文献
  • 「小麦粉料理探求事典」東京堂出版
  • 「県民性がわかるおもしろ食の大事典」青春出版社
  • 「知っておきたい「食」の日本史」角川ソフィア文庫
  • 「関西人と関東人の味の違いに驚かされる本」河出書房新社

利久まんじゅう

利久まんじゅう

【材料】10個分
こしあん 200g
こんな小麦粉ほしかった 100g
黒砂糖 70g
大さじ2
重曹 2g
小さじ1
打ち粉(こんな小麦粉ほしかった) 適量

作り方

1. こしあんは、10等分にして丸めておく。

2. 鍋に黒砂糖、水を入れて火にかけ、沸かさないようにして煮溶かす。

3. ボウルにあけて粗熱をとり、水で溶いた重曹を加える。

4. こんな小麦粉ほしかったを(3)に加えてゴムベラで混ぜ合わせる。

5. 打ち粉をした台の上にのせ、二つ折りにしてのばし、この作業を何度か繰り返して生地をなめらかにする。

6. 10等分し、手のひらでつぶし、(1)のこしあんをのせて包み、丸く形を整える。

7. 蒸気の上がった蒸し器にクッキングシートを敷き、(6)を並べ、霧吹きで表面に水を打ち粉が消えるくらいにふきかける。布巾でくるんだ蓋をのせ、強火で約12~14分蒸す。

調理時間=約30分
1個=約91kcal

クッキングアドバイス 茶人、千利休が好んで食べたといわれる利久まんじゅう。茶まんじゅうや温泉まんじゅうも黒糖を使った茶色い生地はこのタイプのおまんじゅう。最も親しみのあるまんじゅうのひとつでしょう。ご家庭でも意外と簡単に作れますので、是非トライしてみてください。 あんを包むときは、やぶかないように、少しずつ生地をたぐりよせるようにして包むときれいにできます。もし、やぶけても指できゅっとつまむと、生地はくっつきますので、大丈夫。慣れたらどんどん生地を薄くして、薄皮まんじゅう風に仕上げても良いでしょう。

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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