こうして生まれた 小麦粉料理 工夫上手日本独自の小麦粉料理 第17回「お好み焼き」 今回はお好み焼き 日本の代表的な小麦粉料理です。

お好み焼きは戦後に生まれた比較的新しい料理ですが、どこが最初か(大阪?広島?東京?)、そして誰が「お好み焼き」と命名したのかもわかっていません。戦後の情報化時代なのに何故なのでしょう。

小麦を水で溶いて鉄板で焼く「お好み焼き」の起源は、残っている資料では千利休が茶会で出した「麩の焼き」があります。その製法はうどん粉を水と酒で練り、鉢に薄く伸ばして焼き、甘味噌を塗って巻くというものです。
その後、江戸時代、江戸では「文字焼き」が子どものおやつとして人気を集めていた時期がありましたが、「お好み焼き」の特徴を持つ食べ物は、他に見当たりません。

明治に入り、東京下町で「文字焼き」が復活し、やがて「もんじゃ焼き」となります。(詳しくは第12回「たこ焼き」と「もんじゃ焼き」を参照してください。)
また、東京では、明治の後半に「どんどん焼き」という砂糖を使わない甘くないお好み焼きの原型が現れました。
屋台料理で、具材は牛肉、豚肉、卵、干しえび、揚げ玉、キャベツなどで、焼いたものを新聞紙にくるんで手渡されました。どんどん焼きは屋台をひきながら、ドンドンと太鼓を鳴らしたことに由来する呼び名です。
食べものに関する本も多く執筆している池波正太郎はどんどん焼きへの思いを次のように綴っています。

新年を迎えたある夜。
久し振りで〔どんどん焼〕をやった。
いわゆる〔お好み焼〕であるが、われわれ東京の下町に生まれ育ったものにとって、この
〔どんどん焼〕ほど郷愁をさそうものはない。
いま、私が住んでいる家は二年ほど前に改築したものだが、そのとき、どんどん焼用の大きな鉄板をそなえた食卓をつくり、私が来客に、二十余種におよぶどんどん焼をつくって食べさせようなどと考えていた。

(「食卓の風景」新潮社 1973年)


やはり明治の後半、大阪・神戸・広島ではもう一方の「お好み焼き」の原型「一銭洋食」と呼ばれる一銭で買える菓子が駄菓子屋で売られていました。
一銭洋食は、水でゆるく溶いたうどん粉を薄く丸く焼き、粉かつお、ネギ、とろろコンブをのせて半分に折り、ウスターソースをかけたものです。当時としてはハイカラなソースの味付けから洋食という呼び名がついたようです。
大正、昭和の初期にかけて、東京では「どんどん焼き」大阪・京都では「洋食焼き」、神戸では「にくてん」と呼び名が変わるものもありますが、お好み焼きの前身として子どものおやつから大人の料理に近づいていきました。

明治、大正、昭和は日本の歴史上、最大の食生活の変化の時期でした。
肉食の解禁、小麦粉をはじめとする海外からの食材や、新たな調理法の広がりなど、もともと食への興味が旺盛な国民性がこの大きな変化を歓迎しました。
それまでも四季の変化に応じて食事を工夫していましたが、多様な献立が可能になり、特に粉食はごはん一辺倒だったベースに大きな変化を与えました。
「お好み焼き」の前身たちも、それぞれの地で様々に工夫がこらされ、いつしか「お好み焼き」という料理として成立するようになったのでしょう。

お好み焼きは地域により特徴は違いますが、どの地でも絶対に欠かせない食材といえば、キャベツです。
実は日本以外の国で、水溶き小麦粉の生地にキャベツを取り合わせて焼くという発想のものはないそうです。ですから、お好み焼きは日本独自の料理といえます。工夫上手の日本人が発見したキャベツと水溶き粉の相性の良さは、トマトとパスタの相性を見つけたイタリアと並ぶ、食の革命なのかもしれません。

出典及び参考文献
  • 「お好み焼き免許皆伝」創森社
  • 「続OCOLOGY」オタフクソース株式会社
  • 「OCOLOGYⅢ」オタフクソース株式会社
  • 『「粉もん」庶民の食文化』朝日新書
  • 『「街的」ということ お好み焼き屋は街の学校だ』講談社現代新書

豚モダン

豚モダン

【材料】2枚分
キャベツ 200g
お好み焼粉(昆布かつお風味) 100g
2個
120cc
紅生姜 20g
豚バラ薄切り肉 140g
金のパスタリングイネ 140g
だし粉 小さじ1
ウスターソース 大さじ3
大さじ2

お好み焼きソース 適量
マヨネーズ 適量
かつお節 少量
青のり 少量
紅生姜 適宜

作り方

1. たっぷりの湯でリングイネを8分茹でて水気を切っておく。

2. キャベツは粗みじんに刻む。豚バラ肉は3cm幅に切る。

3. お好み焼粉、卵、水を混ぜ合わせ、キャベツ、紅生姜を加えて混ぜる。

4. 温めたホットプレートで豚肉を炒め、(1)のリングイネ、だし粉、ウスターソース、水を加えて炒め合わせ、取り出しておく。

5. ホットプレートをキッチンペーパーでふき、サラダ油を薄く油をひき、(3)の生地を1/4量ずつ2箇所に広げるようにして流し、(4)のリングイネを半量ずつのせる。

6. それぞれに残りの生地をかけ、ひっくり返す。蓋をし、そのまま約5~6分焼いて中まで火を通す。

7. お好み焼きソースをぬり、マヨネーズを線描きし、かつお節、青のり、お好みで紅生姜を添える

調理時間=約30分
1枚分=約884kcal

クッキングアドバイス 関西では定番の、具の中に麺が入ったモダン焼き。通常中華麺(蒸し麺)を使用しますが、金のパスタを使用しました。卵入りでモチモチとした歯ごたえが特徴の金のパスタは、パスタメニューのみでなく、お好み焼きにも好相性。楕円形のリングイネには、ウスターソースもよくからみます。お好みやの生地は、卵の量を多めにし、ふわふわの食感に仕上げました。キャベツも千切りでなく、みじんに刻むことで、更にふわふわの生地に焼き上がります。

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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