こうして生まれた 小麦粉料理 折りパイ、練りパイ 世界で愛されるパイ料理 第13回「パイ料理」 アップルパイやレモンパイ タルトにミートパイ 今回は小麦粉を使った代表的な料理“パイ”のお話です。

パイは小麦と水と固形油脂で生地を作り、これを皮にして中味を包んだり詰めたりしたものをオーブンで焼いたものです。
紀元前1200年頃の古代ローマの時代にすでに、肉を焼く時に小麦粉の生地で包んでから焼く方法があったといいます。焼きすぎたり、うまみを逃がさない工夫がされていたのですね。また、小麦の生地に油をまぜこみ、熱した油であげたお菓子もあったようです。

パイは英語で鳥のカササギのことをいいます。
カササギはいろいろなものを巣に持ち込む習性があるそうです。
いろいろな具を詰めて焼きあげるのでイギリスでパイと命名されたといいます。

小麦粉と水を混ぜ、それにバターを加えるという方法はフランスで始められたといわれていますが、始まりの時期は14世紀とも17世紀ともいわれ、定かではありません。
パイのパリパリとした食感は、小麦粉に含まれるグルテンにバターを加えることで生まれます。

パイには大別して2種類の作り方があります。
「折りパイ」― 水で練った小麦粉を延ばして、その上に平らにしたバターをのせ、何回も折りたたんでいきます。
「練りパイ」― 小麦粉とバターを最初から混ぜておいたものを折りたたんでいきます。

パイの料理やお菓子は、ヨーロッパ各地、アメリカ、カナダ、ロシア、オーストラリアなど世界各地で食べられています。
イギリス人の好みは、ミートパイ、チキンパイ、ポークパイなど、カササギのようにいろいろな具を入れて食べます。イギリスといえばパブが有名ですが、お酒好きの多いイギリスでは多くの人がパブでの飲食を楽しみ、そこではさまざまなパイが提供されます。ビールとパイ料理はよく合うみたいですね。
アメリカ人は、なんといってもアップルパイです。「アップルパイのようにアメリカ的(=As American as apple pie)」という慣用句があるほどアメリカの象徴といえるデザートです。パンプキンパイも感謝祭の食事に欠かせないものです。アメリカではパイのお菓子の方が好みのようです。
1878年ヨーロッパに長期滞在した作家のマーク・トウェインは恋しくなったアメリカ料理を50以上並べた中に、アップルパイ、パンプキンパイの両方をあげていました。
フランス人は、パイの料理も菓子もどちらもよく食べます。パテ(パイ生地による包み焼き)はイギリス同様に色々な具材を楽しみますし、伝統的にお菓子作りは多彩、タルトやミルフィユなどパイ菓子はさまざまあります。18世紀には木の葉の型に仕上げたリーフパイが流行しました。
スペインではパイを使ったこんなことわざがあります。
"Ni amigo reconciliado, ni pastel recalentado"
= "
繕(つくろ)い直した友も温め直したパイもだめ"
温め直したパイはおいしくないのと同様に、いったん壊れた友情はなかなか元に戻すのは難しいという意味です。

日本では江戸前期の1635年にポルトガル人によって愛媛県松山市にタルトと名づけられたお菓子が伝わりました。これは、今でも松山の名産品です。ただし、パイとは少し違っていて、柚子入りのアンをカステラ生地で巻いて作るロールケーキ状のお菓子です。
1785年長崎出島を訪れた蘭学者大槻玄沢(おおつきげんたく)は、そこで紹介されたオランダの料理の数々を「紅毛雑話」という著書に残しています。その中に「パスティ」の名称でパイ料理が記載されています。
しかし、日本でパイ料理やアップルパイが食べられるようになったのは、昭和になってからのようです。

出典及び参考文献
  • 「フランス 食の事典」白水社
  • 「世界の食文化 アメリカ」農文協
  • 「洋菓子はじめて物語」平凡社新書
  • 「今日はロシア料理」文化出版局
  • 「世界の味探求事典」東京堂出版
  • 「クックブックにみるアメリカ食の謎」東京創元社
  • 「英国パブストーリー」東京書籍
  • 「世界たべものことわざ辞典」東京堂出版

タルトタタン

タルトタタン

【材料】20cmマンケ型1台分
パイ生地(練り込みパイ)

イーグル(強力粉) 100g
ハート(薄力粉) 50g
小さじ1/2
無塩バター 100g
冷水 75cc


りんご 5個
無塩バター 50g
グラニュー糖 50g
打ち粉(強力粉) 適量

作り方

1. パイ生地を作る。強力粉と薄力粉、塩をボールに合わせてふるい入れ、1cm角に切った無塩バターを加えて、スケッパーで切るようにして細かくそぼろ状に混ぜていく。

2. 冷水を加えて混ぜ合わせ、粉気が無くなってきたらひとまとまりにし、ラップで包んで冷蔵庫で1時間以上休ませる。

3. 打ち粉をしながら、めん棒で押すようにして長方形にのばしてから、表面が平らになるようにめん棒をかける。

4. 三つ折にする。

5. 90度向きを変えて(3)と同様に長方形に延ばしてから再び三つ折にする。

6. ラップで包んで、1時間以上休ませる。

7. (3)~(5)と同じ要領で三つ折り2回を1セットを繰り返し、冷蔵庫で再び1時間以上休ませる。

8. りんごは皮をむき、縦4等分に切り、芯を取り除く。

9. フライパンに無塩バター、グラニュー糖を半量加えて火にかけ、キャラメル色に焦がし、りんごを加えて炒める。残りのグラニュー糖を加えてよくからませながら炒める。

10. 蓋をして弱火で約10~15分蒸し煮にする。

11. 蓋をはずし、強火にして水分を飛ばしながら濃いキャラメル色に焼き付ける。バットに出し、粗熱を取る。

12. 蓋(7)の生地を4mm厚さに延ばし、フォークなどで全体に穴を開け、型のサイズに合わせて丸形にカットし、冷蔵庫に入れて15分程休ませる。

13. 型にバターをぬり、グラニュー糖をまぶす。(共に分量外)

14. 型に(11)のりんごを隙間無く並べる。

15. (12)の生地をかぶせ、縁の部分は軽く内側に折り込み馴染ませる。

16. 210度のオーブンで約25~30分焼く。粗熱がとれたら、皿をのせ、ひっくり返すようにして型からはずす。※取りにくいようなら底を少し温めると取り易い。

1人分=約251kcal
調理時間=約90分(※生地を休ませる時間は省く)

クッキングアドバイス 手作りのパイ生地は、少々難易度が高いですが、バターを溶かさないように、作業台の上を保冷材などで冷したり、めん棒でのばしたらその都度冷蔵庫でしっかりと生地を休ませると上手に作れます。作業中にバターを溶かさないようにすることが、層の出来るパイ生地になるポイントです。切り落として余った生地は、表面にハケで水か溶き卵をぬって、グラニュー糖をかけて一緒に焼けば、リーフパイのような味わいに。そのまま焼いてクリームやジャムをつけて食べても美味しいです。パイ生地を作るのが大変な方は、冷凍パイシートを使用しても良いでしょう。タルトタタンのりんごは、蒸し煮した後に水分を飛ばしてから、あまり動かさずに、しっかりフライパンの底で焼付けるようにすると、きれいなあめ色になります。

岡嶋芳枝(オカジマ ヨシエ)

フードコーディネーター。
コルドンブルーに通いフランス菓子を学び、同時期に都内のパン教室でパン作りも学ぶ。
その後、料理研究家のアシスタントなどを経て独立。現在「Witch’s Kitchen」主宰。
自宅で開催する料理教室では誰にでも簡単に出来るアレンジ家庭料理を提案している。
その他、オリジナル菓子をインターネットの店舗に提供したり、カタログや広告媒体の料理製作、スタイリングなどにも携わっている。

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